「奥さん! あの時は本当にありがとうございました! お兄ちゃん、元気ですか?」 女性は目を丸くして実加の顔を見た。「えっ……あなたは」「サンクチュアリでスタッフやってる実加です! 2か月前、ロビーで泣いてたお兄ちゃんと一緒に、奥さんのこと探したじゃないですか。あの時のお兄ちゃん、アイスクリーム落として泣いてたから、ウチが厨房から新しいのもらってきて」「あ! あの時の……!」 女性の表情がパッと明るくなった。「覚えてます、あの節は本当に助かりました。あの子、今でも『あのお姉ちゃんのアイス、美味しかった』って言ってるんですよ」「ほんとですか! ウチも嬉しいです」 実加は満面の笑みを浮かべ、手に持っていた封筒を差し出した。「奥さん、ウチのホテル、今ちょっと大変なんです。でも、ウチの社長と総支配人は、お客さんの笑顔を一番に考えてくれる人たちです。どうか、今のサンクチュアリを守るために、力を貸してください!」 女性は封筒を受け取り、手紙の文面に目を通した。「……ええ、わかっています。ニュースを見て心配していたんです。あんなに温かいホテルが、効率ばかり追い求めるような場所になってしまうのは嫌ですから。もちろん、委任状にサインしますよ」 言いながら女性は首を傾げた。「でも私たちは株主優待目的で、ほんの少し株を持っているだけです。こんな少量でもお役に立てるんですか?」「もちろんですよ! ありがとうございます!」 実加が深々と頭を下げると、女性は嬉しそうに微笑んでサインをしてくれた。 翔吾もその横で、安堵の息を吐きながら一礼する。 次の訪問先は、古い日本家屋だった。 縁側でお茶を飲んでいた白髪の老人に、実加が声をかける。「田中のおじいちゃん! こんにちは!」 老人は湯呑みを置き、目を細めて実加を見た。「おお、サンクチュアリの実加ちゃんじゃないか。今日も元気だねえ。訪ねてくる
Last Updated : 2026-06-23 Read more