何?真帆は一瞬きょとんとし、目にかすかな驚きを走らせた。「……連れて帰るんじゃなかったの?」その一瞬の隙を突かれ、手首をぐっと引き寄せられた。一雄はもう片方の手でビニール袋の中から何かを取り出し、不意を突いて腫れ上がった手首に貼り付けた。刺すような冷たさが一気に思考を引き戻した。思わず息を呑み、下を見ると、手首には手のひらほどの大きさのアイスパックが当てられていた。一雄は片手でそれを押さえ、もう片方で彼女の手首を支えながら、ゆっくりと顔を上げた。「戻りたいなら、今からでも行き先変えさせるけど?」「いや、そういう意味じゃなくて……」真帆は、自分でも気づかないうちに声を柔らかくし、そのまま呆然と一雄を見つめていた。「さっきの男……」「ただの大学の先生だよ!」真帆ははっと顔を上げ、無意識に焦りをにじませた声で言った。「見てたでしょ?あの子たち、みんな先生の生徒で、一緒に来てるの。町や村の子どもたちに心理教育をするための実習で、学校の課題なの。変な意味なんてないから」一雄は眉をわずかに上げ、余裕のある目で彼女を見下ろした。「変な意味がないなら、そんなに必死になって説明しなくてもいいだろう?」「……別に」真帆は唇を噛み、曖昧に否定した。「何もない」口にした瞬間、自分でも説得力のなさを感じていた。でも、焦らないわけがなかった。前にも同じようなことがあった。あれは痛いほどの教訓だった。一雄は疑り深い。だから同じことは、二度と繰り返せない。……車は四つ星ホテルの前で止まった。直哉は後ろの車から降り、チェックインの手続きをしに向かった。四つ星とはいえ、一雄が普段出張で泊まるスイートとは比べ物にならなかった。それでも、村のドアすらない教室よりはずっとましだ。部屋に落ち着いたころには、すでに深夜だった。真帆はまだしばらく患部を冷やす必要があり、一雄は先にシャワーを浴びに浴室へ向かった。ソファに座ってぼんやりしていると、外で突然、大きな音が響いた。夜空に花火が広がり、花びらのように降り注いでいる。真帆は立ち上がり、窓際へ向かった。黒い空を照らす光を見上げ、思わず口元を緩ませた。「こんなのが好きだったんだ」見入っていたせいで、後ろに人が来たことにも気づかなかった。腰に腕
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