そこまで聞いて、直哉はもうそれ以上言葉を挟むことも、質問を重ねることもやめた。自分の視野が狭かったのだと痛感したからだ。ムニンジュエリーの経営は、会長の度重なる不当な介入によって、すでに崩壊寸前まで追い込まれていた。西園寺家の次男には経営の才能など微塵もないというのに、会長は彼を総支配人に任命した。さらに、デザイナーたちが新作を出すスピードはカタツムリよりも遅い。あがってくるデザイン画そのものは悪くないが、これほどの遅さと非効率では、ムニンジュエリーの末期的な残局を救うことなど到底不可能だった。一雄が和幸のカードを取ろうとするのは当然だった。何より、以前あれほど心血を注いで西園寺グループに引き入れようとした時には全く応じなかった大和を、向こうから差し出してくれたのだ。断る理由などどこにあるだろうか。一雄との提携を取りまとめ、和幸はすこぶる上機嫌で自社へと戻った。オフィスの椅子に腰掛け、ふと思いつきで真帆に電話をかけると、近くで一緒にご飯でも食べようと会社へ呼び出した。あの一雄という特大の「嫉妬の塊」がこのことを知ったら、今度はどれほど嫉妬の炎を燃え上がらせるか分かったものではない。だが、和幸としてはあえて彼に危機感を持たせたいのだ。そうでなければ、あいつのバカでマヌケな恋人を大事にさせられないからな。外の風は骨に染みるぐらい冷たかった。タクシーから降りた瞬間、真帆は思わずぞくっと身震いをした。彼女はダウンジャケットをきゅっと体に着込んで、マフラーを少しきつめに結び直した。これほど寒い冬だというのに、年の瀬が迫ってもまだ一度も雪が降っていない。西尾グループのビルに近づいた時、正面の入り口に大きな人だかりができていた。何事かと真帆が人混みをかき分けて中を覗き込むと、その中心に、秋物の薄いパーカー一枚を着た若い男が座り込んでいた。顔は青白く、唇は紫色に変色している。一目で凍えているのが分かった。彼は画板を抱きしめたまま地面に座り、力なくうつむいている。その傍らでは、六十代後半とおぼしき一人の老人が、男の薄手の衣服の襟元を乱暴に引っ掴み、口汚く罵り続けていた。西尾グループの目と鼻の先でこれほどの騒ぎが起きているというのに、なぜ警備員の一人も止めにこないのだろうか。真帆は微かに眉をひそめた。どうやら、和幸の会社の警護はずいぶん無責任
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