章はソファにゆったりと背を預け、淡々と口を開いた。「彼女が和也とすっぱり別れて、お前と電撃結婚できたのは、根っからの負けず嫌いだからさ。あの頃、和也に押さえつけられていなかったら、それに両親を亡くして心が弱り、愛情に飢えていなかったら、あんなに長く付き合っていなかったはずだ」隆は眉をひそめた。「和也のやつ、本当にひどいな。お前の言う通りだ。絵里の昔の性格なら、あんなに長く一緒にいるわけがないし、あんなに辛い思いをすることもなかった。そういえば、なんで絵里はあいつを好きになったんだ?俺たちの知らない何かがあるんじゃないか?」章は両手を広げ、心当たりがないと身振りで示した。裕也は眉を寄せ、グラスの酒を飲み干すと、自嘲気味に鼻で笑った。「ひょっとしたら、和也が彼女の命でも救ったのかもな」だからこそ、あんなに一途だったのだろうと。隆は鼻で笑った。「お前こそ、本当に彼女の命を救ったじゃないか。しかも今日だって助けたのに、彼女は全く恩に感じていないようだったぞ。今回ばかりは本気で別れるつもりみたいだな。命の恩人というカードも通用しないらしい」隆はからかうように指摘した。そもそも「命の恩人」という立場は、最初から何の役にも立っていなかったではないか、と。裕也自身、かつて彼女を救った事実を知られるのをあれほど恐れていたではないか、と。隆は面白おかしく振り返る。当時、裕也は「絵里は恩着せがましい人間を嫌うし、自分のことも嫌っている」とこぼしていたではないか。まったく、そんな二人が五年越しに結ばれるとは。和也が度を越してひどい男でなければ、絵里が裕也と一緒になることなどなかったのではないか……三人は同時に押し黙り、誰も言葉を発しなくなった。裕也は背もたれに深く寄りかかり、頭をソファの背に乗せて目を閉じた。きらびやかな照明が、彼の顔をめまぐるしく照らし出しては過ぎ去っていく。酒のボトルを握りしめる手に力がこもり、睫毛が微かに震えた。翌日、絵里のもとに知らせが届いた。やはり、騒ぎを起こした作業員はサクラだ。紛れ込んでわざと煽動し、トラブルを起こしたのだ。絵里は不審に思った。では、裏で糸を引いているのは誰なのか。その男は頑なに口を割ろうとしない。警察も手を焼き、男を拘束した上で絵里の意向を尋ねてき
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