All Chapters of 有給休暇は異世界で: Chapter 81 - Chapter 84

84 Chapters

第81話:ヤマナリパンを救え

 親父さんの代理でパンを買いに来たら、突然の廃業宣言に巻き込まれてしまった。「辞めるんですか? パン屋」「最近パンの売り上げがそれほど好調じゃなくてな。他の場所に新しいパン屋ができたせいだろうな。そっちのパンのほうがフカフカで、黒パンにも混ぜ物をして少しでも柔らかくしようとする努力をしているらしい」 ふむ、よくある新規出店に押されて古い馴染みの店が勢いに押し切られてしまうパターンか。まさに死活問題だろう。ここのパンには毎回顎を鍛えてもらっているし、銀の卵亭の親父さんも新しい店に切り替えて……というのは手間が増えるだろうしな。 それに、新しい店が同じように区切り日払いの掛け払いができるかどうかは怪しい。商売人にとって掛け売り掛け買いができるかどうかは大きく変わるところだろうし、できれば続けて商売してもらいたいところだろうな。「昔から懇意にしてもらってる店には引き続き利用してもらってはいるんだが、一般の家庭の需要が減って来ていてね。何かうちなりの売りを押し出さないと厳しいんじゃないかって家内とも相談してるんだが、いまいち思い浮かばなくてな。兄さん何かいい方法ないか? できることならなんでもやってみるつもりだ」 ふむ。パン屋か。さすがにパンチートは……ベーキングパウダーを使ってふっくらさせた白パン、というのは持ちネタとしてあったが、すでにこの世界ではふっくら白パンが存在する。 つまり、重曹なりベーキングパウダーなり、つまりは炭酸水素ナトリウムを使った膨張効果を使ったパンが一般に手に入るかどうかはともかく、既に存在するのでチートを一つ潰された気分だ。「これだけ詰め込め! 異世界に行ったときにチートできる知識100選」が99選になってしまった。 パン屋といえば……いや、パン屋ではなく、パン工場と幅を広げて考えよう。食パンに限らずパンメーカーでやっているキャンペーンをそのままこっちでもやってみるとかはどうだろうか。例えば……「パンを複数個買ってくれた人には丈夫なお皿をプレゼント、とかはどうだろう? どこかのギルドと共同開
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第82話:ぶらボコマズ

 セルフィと二人、街に繰り出すことになった。といっても、街のどこに何があるかもわからない二人、どこをどう歩いたものかと悩んでいるうちに、サイバルフクショクテンの前に着いていた。「ここも久しぶりに通るな」「久しぶりって程前でもないですけどね。まだ出会って10日ぐらいですよ、私たち」「逆に言えば、もう10日もたったのか……10日でしっかり稼げているのかな、俺たちちゃんと生活していけてるよな? 」「そうですね……ご主人様の財布の重さを確認していけばわかるとは思いますが、マヨの販売の代金も一部これから入るのでしょう? 仕事しなくても一定のお金が入るなら、あまり心配する必要はないとは思うのですが」「それもそうだな」「うむ、二人とも久しぶりであるな」 気が付くと、店先にサイバルさんが出てきていた。「どうも、ご無沙汰してます。あれから順調に暮らしていけております」「うむ、それは何よりである。それと、売ってもらった服だが、さすがに素材までは断定することはできなかった。残念だが、まだ私の財力と実力では再現は難しいらしいの」 石油原料の服の再生産は……さすがにできないだろうな。後はゴムもあるか。さすがにこのあたりの気候でゴムの木に似たものが栽培ないし自生している可能性は低いだろう。「うむ、それで二人は今日は何用かな? 新作でも見に来たのかね? 」「いやあ、仕事が一区切りついたんで街のあちこちをぶらついて、どこにどんなものがあるのか確認しつつ、二人でお出かけですよ」「うむ、そうか。地図が欲しいなら冒険者ギルドでこの街の大まかな地図も販売していたはずだ。もし迷うのが嫌だったり、特定のお店へ行きたかったり、逆に近寄りたかったりするならば利用するとよい」「特定のお店とは? 」 セルフィが首をかしげている。サイバルさんが特定のお店というからには、あまりセルフィには聞かせたくない方面のお店だろうな。「うむ、子供にする話ではないが、娼館であったり、異性が酒を提
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第83話:潜入、マヨチュッチュ

 ラムーさんを手伝い、木箱に入りきるだけの泡立て器を持って移動しようとしていたので、アイテムボックスに入れて両手をフリーにしてあげると、めちゃくちゃ喜んでいた。「ありがとうございます。本当に、アイテムボックスまで持ってるなんてタカナシ様はすごい方ですね」「どうせお店の見物へ行くついでなので。向こうで渡せばいいんですよね? 」「はい、よろしくお願いします。あーこれで肩が楽になった」「しかし、人数分の泡立て器ですか……必要なんですか? 」「ええ、従業員全員分必要でしょう? 」 人数分? という引っ掛かりはあるが、まあとりあえず持っていくとしよう。現金なもので、急にリラックスし始めたラムーさんに少し苦笑いしてしまう。ラムーさんの後に続き商業ギルドから少し離れて太い幹線道路を進むと、すぐに列を発見することができた。これがマヨの列なのか。 並んでいる客を見ると、容器を持っている客と持っていない客両方が存在する。「容器は……自前なんですか? それともつけてくれるんですか? 」「大きさと量にもよりますが、それぞれ値段を取ることにしています。これも木工ギルドからの買い取り物ですからね。必要以上に吹っ掛けるつもりはありません。あと、容器を持ってきてくれた人にはその分容器代を取らないことにしています。我々が売りたいのはあくまでマヨ。容器はついでですので」 たしかに、素手で受け取りに来て手に乗せてそのまま帰ってもらうわけにもいかんからな。しかし、容器も大小それぞれで来ているな。ちゃんと量り売りでやってるんだろうが、同じ容器を持ってきている人は、お試しの容器をそのまま持ってきて、その容器いっぱいでいくらなのかを計算させてもらうのだろうか。 安ければ大きい容器で買って帰って、高いと感じたか、そこまで需要はなさそうと感じたらサンプルを入れておいていった容器で事足りる、というところだろう。各ご家庭にも配布というわけにはいかないだろうが、店で飯を食った人が家に帰ってマヨの美味しさを広めているなら……と、いたいた。 明らか
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第84話:分業制マヨ製作工場

「職人を集めやすくなる……というのはどういうことですか、新しい業種の職人ですから、まだそれほどの技量の違いや慣れに差はないと思いますが」 ラムーさんは職人として完全に一日働く、ということを想像して人を雇うことを考えているようだ。「例えば、朝と夜は子供の世話をしている女性が、昼の鐘から夜の鐘の間だけ働く、というような場合でも、この分業制を取り入れればその間だけでも仕事に就くことができます。つまり、暇があれば誰でも職人として働くことができるというわけです。それだけ気軽に人を集めることができるなら、それは工房として……そう、マヨ工房として非常に大きなアドバンテージを得ることができます。職人を雇うのに人を選ばなくて済む、という大きなものがね」「工程を単純化することで誰でもできる作業に変化させ、そこに誰が入り込んでもいいようにさせるということですか……これ、他の業種でも同じようにできることにもなるんですかね? 」「物づくりの工房……特にギルドでまとめているジャンルの場合は反発のほうが大きいと思いますよ。一から十まで全部できるようになってようやく職人として一人前、として考えているところからすれば、そんなことをするのはとんでもない、と言われることでしょう。ですが、そういう反発の小さい所でより効率的にやっていくことは難しくないと思いますよ」「……参考にさせてもらいます」 ラムーさんがペンを走らせて注意事項を書き記していく。マヨ工房でざっくりできる加工はこのぐらいだな。「あとはそうですね。テーブルに加工を施して、かき混ぜる容器を固定できるようにすれば、器を押さえている人の分だけ人手が空きますから、ラインをもう一つ増やすようにできると思います。これは今すぐできるようになるというわけではないですから、ラインを増やすときの参考にするといいかと思います」 ラムーさんが「なるほど、なるほど」と話しながら全力でペンを走らせていく。あとはギド親方から手回し式泡立て器がいつ届くかだな。それで更に効率が良くなることだろう。器の固定と
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