久世物産の会議室に並べられた資料は、前回までのものとは明らかに違っていた。そこには、KUZÉ ma vieの淡いロゴも、商品写真も、限定ボックスの美しい色味もなかった。机の上に置かれているのは、白い紙の束だった。接待費一覧。会食費明細。ホテルラウンジ利用明細。タクシー代精算。贈答品リスト。稟議書。決裁申請書。業務目的欄。同席者記録。取引条件変更履歴。前回までの資料には、商品名や在庫数が並んでいた。今日の資料には、日付と金額と承認印が並んでいる。華やかなブランドの裏側にあった、もっと地味で、もっと逃げにくい数字だった。怜央は、机の上の資料を一瞥しただけで顔をしかめた。「今度は何を見るんだ」声には、最初から苛立ちが混じっていた。美緒は、資料の一番上に置いた進行表を開いた。「本日は、KUZÉ ma vie周辺の施策判断と、関連する経費処理・決裁フローを確認します」「経費処理まで見るのか」怜央はすぐに言った。「商品や在庫の話ならまだ分かる。だが、接待費や移動費まで関係あるのか」美緒は怜央を見た。見たが、その視線には怒りも、責める色もなかった。「販促費、接待費、贈答品、移動費が、施策判断と取引条件にどう関係しているかを確認する必要があります」「細かすぎるだろ」怜央は吐き捨てるように言った。「新規ブランドの立ち上げで、ある程度の会食や関係づくりが必要なのは当然だ」長谷川が、銀行側の席で資料を整えながら口を開いた。「本日の確認は、私生活の問題としてではなく、経費処理と取引判断の問題として確認しています」会議室が、わずかに静まった。長谷川は、浮気という言葉を使わなかった。相沢紗季の名を責めるようにも出さなかった。ただ、経費処理と取引判
อ่านเพิ่มเติม