【恒一視点】店へ入るたびに店員は一瞬だけ戸惑ったような顔をする。だが、それはほんの一瞬で、すぐに営業用の笑顔へ変わる。違和感はあるものの、気にするほどではない。「いらっしゃいませ、一ノ瀬様」「一ノ瀬様、本日はどのようなご用件でしょうか」名前。他に客がいても自分を優先する接客。恒一は満足だった。(やはり一流は違う)接客の質が違う。恭しいと感じる店員の所作。言葉遣い。立ち居振る舞い。どれも洗練されており、彼らに接客されると自分が一流であると分かる。それが心地いい。.本当は違う。最初は恒一が実花と一緒ではないことに驚き、美鈴を見て『またか』と納得する。実花はいつもの紳士用品の店にいる。そこで待たせるつもりなのだろう。いつものことだ。そのようなことを思いながら店員は恒一と美鈴を見ていた。彼らの買い物は長く、店員たちは待たせている実花を気の毒に思った。だから、恒一たちの要求に優先的に応えていた。早く実花と合流させるために。ただ、それだけだった。◇◇◇「恒一兄さん」宝飾店を出たところで、美鈴が腕を絡めてくる。いつものことなので何も思わない。でも。「次は下着を見たいんだけど」下着。その言葉に、思わず生唾がわく。女性経験がないわけではない。それなのに妙な、焦りのようなものを感じる。「好きに見てくればいい」「一緒に来て?」美鈴は少しだけ唇を尖らせ、甘えるように見上げてくる。一人で行かせるべきだ。父親からも、実花との婚約がまだ決定ではない以上、実花が不快に思う行動を避けるべきだと言われている。(しかし…&h
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