All Chapters of 夢幻の旅路と二つの世界 〜『夢』に喰われる街で、能力“ブラム”で世界を救う〜: Chapter 21 - Chapter 29

29 Chapters

第二十一話

夢の世界に入ると、いつもの青白い空間に、あの女性が立っていた。「少し、面倒なことになっているようです」「面倒?」女性は複雑そうな表情を浮かべた。「どうやら、あなた方二人以外にこの世界に立ち入った者が…」「しかも、たった今」「!」黎慈は椅子から即座に立ち上がった。「どこにだ! 教えてくれ!」「一旦冷静にお願いします。先程、お連れ様にも話をしておきましたが…」「まぁ、私の話も聞かずに飛び出して行きましたけど」黎慈は深呼吸をして、再び椅子に腰を下ろした。「ただ……」「ただ?」女性は一呼吸置き、静かに続けた。「この話は、我々にとって悪い話という訳でもないようです」「どういうことだ?」「どうやら、我々以外の部外者がこの世界に立ち入ると、夢の力が収まるようです」「弱まるとどうなるんだ?」女性は少し考え込んだ後、自分の見解を述べた。「おそらくですが、ご自身のブラムの限界を超えて使用できるようになるかと」「ただ、それなりのリスクもあるようですが……」「リスク?」「言っていなかったのですが、ブラムは自身の精神を削って発動させているんです」「そういう経験、最近ありませんでしたか?」言われてみれば、最近疲れやすくなった気がする。衣百合からも目の下の隈を指摘されていた。「自身の精神をさらに削り、人知を超えた力を発揮できる」「もしかしたら、この世界を丸ごと消滅させられるような力も……」「そんな力が……」黎慈は自分の手の平を見つめた。「ただ、物凄い代償が付いてきます」「最悪、夢から目覚めることができなくなる可能性も否定できません」二人はしばらく黙り込んだ。黎慈が静かに聞いた。「ところで、なんで弱まるんだ?」「この世界は、誰もが持っている第二の世界なんです」「所謂、パラレルワールドのような類として考えてもらって構いません」「現実に実際に生きている人は、ここでも等しく生きています」「意識しているかどうかの問題です」黎慈は俯いて考え込んだ。「……理解し難い話だな」「重々承知の上でお話ししています」重たい沈黙が流れた後、女性は続けた。「誰かがこの世界を『現実』として認識する」「つまり、認知されると、夢全体の力が弱まるようです」「認知されると、あの化け物に襲われるんじゃないか」「……おそらくは」黎慈はその
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第二十二話

恐る恐る扉を開けると、広い空間が広がっていた。大きな机と無数の椅子が並び、まるでダイニングのようだ。大きさからして、現実世界の体育館に相当する規模だろう。中には、先ほどと同じような鎧姿の兵士が数十人。その中に、明らかに風貌の違う人物がいた。檻の中に閉じ込められており、おそらく女性が言っていた「迷い込んだ人」だろう。二人は即座に物陰に隠れた。「いるな」「ああ」黎慈は景佑を見た。「どうする? 今すぐ行くか?」「いや、一度戻ろう。あの数と相手するのは危険すぎる」「……それもそうだな」二人は慎重に部屋を離れ、扉近くの壁に寄りかかった。「さて、どうするか」「早く助けに行かないと……」しかし、簡単な策は思いつかない。記憶を見た時に大量の化け物と戦闘した経験はあったが、今は知性をある程度持ち合わせている化け物だ。連携なども取ってくることを想定しなければならない。数秒の沈黙の後、景佑が壁の下にある排気口ダクトを指差した。「これじゃね?」「え?マジで?」「でも、これぐらいしか……」確かに、他に奇襲を仕掛ける方法はなさそうだ。二人はすぐにダクトの中へ入った。中は薄暗く、埃が溜まっていた。目を細めながら這いずり、道を進む。「景佑、大丈夫か?」「なんとかな。とりあえず進もうぜ」数分這いずっていると、前方に光が見えてきた。外を覗くと、兵士が立っている。黎慈は勢いよく上から飛び降り、兵士の後頭部をブラムを乗せて殴りつけた。兵士は声も出さずに灰となって消えた。続けて景佑が降りてくる。「ここは?」「構造的に、現実の体育倉庫に当たる場所だろうな」「ってことは、すぐそこにいるのか」二人は様子を確認するため扉を開けた。扉を開けると、先ほどの大きな空間だった。再び物陰に隠れ、景佑が小声で言った。「さて、戦略はどうする?」黎慈は冷静に答えた。「安全第一、一体ずつ確実に、だな」「了解」二人は呼吸を整え、ほぼ同時に物陰から飛び出した。黎慈は檻がある方向へ一直線に走る。「ネズミが入り込んでいるぞ!殺せ!」早速物音に反応した叫び声が上がった。前から兵士が二体飛びかかってくる。右側の武器を体を受け流して回避し、その隙にブラムを発動。兵士は灰になった。左側は槍を突き出してくるが、スライディングで躱す。その勢いのまま
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第二十三話

景佑は息を荒げ、下を向いていた。「流石に疲れたな……」「……っは、だな」「でも、まだやることがあるぞ」二人は呼吸を整え、檻がある方向へ歩き始めた。黎慈はブラムを使っても開けられなかったことを話した。「どうやら鍵が必要なわけか……」「…めんどいな」同感だ。「RPGとかだったら敵を倒すと落とすとかあるが……」そんな都合のいいものはなかった。探さなければならない。黎慈が考え込んでいると、景佑が上を指差した。「もしかすると……あそこの窓」「現実のあの場所は体育教官室なんだ」「もしかしたら、あそこに鍵が……」「できることもないし、行ってみるか」二人は庭に続く扉を開け、階段を上って体育教官室へ入った。中は誰もおらず、静まり返っている。「?誰もいないぞ?」「じゃあ望み薄かなあ~」そう思った瞬間、物陰から人が出てきた。「なっ、お前!」そこにいたのは夏樹和寿だった。しかし、現実の和寿とは明らかに雰囲気が違う。人ではないような、異様な気配をまとっていた。「黒幕が早くもお出ましってか……」景佑は今にでも襲いかかりそうな体制だった。「ネズミ風情が城内を荒らしまわるとは…」「ふんっ、我が居城にいることを自覚した方が良いぞ?ククっ」「我が居城?ふざけたこと言ってんじゃねえよ!」景佑が珍しく怒声を上げた。「その生意気な余裕、すぐに地獄へ叩き落として見せようぞ!」和寿はホログラムのように笑いながら消えていった。消えた後、床に鍵が落ちていた。黎慈はそれを拾い上げた。「これか……」「っくそ、和寿……」景佑は近くの椅子を蹴り飛ばした。「今は落ち着け。とりあえず檻まで行くぞ」「すまん……」二人は階段を降り、先ほどの部屋へ戻った。南京錠に鍵を刺すと、見事に回った。鍵を開けると、少女がゆっくりと目を覚ました。「あなた方が私を……」黎慈が手を差し伸べると、少女はそれを掴んで立ち上がった。「歩けるかい?」「はい……」景佑が周りを見回した。「ここは危険すぎる。和寿のこともあるし一旦引こう」三人は部屋を後にし、屋敷から出ることにした。「一旦出よう。景佑、道分かるか?」「もちろん。少し走るぜ」黎慈は少女の腕をしっかりと掴み、景佑を先頭に走り出した。廊下を走っていると、言いようがない違和感に襲われた。走りながら
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第二十四話

ダイニングに戻るまでの道も、館内は閑散としていた。扉を開けても廊下と変わらず何もなかった。三人はダイニングから外につながる扉に向かい、ゆっくりと開けた。黎慈が先陣を切り、外へ出る。だが、外も中と同じように気配がなく、ただ中庭に高い外壁があるだけだった。「さて、外には出れたが……」「ここで大丈夫です。ありがとうございました」黎慈と景佑が困惑の表情を浮かべていると、少女はその場に横になった。二人の困惑した顔をしていた。二人が黙って見守っていると、少女の体がどんどん透明になっていった。「おい、これ大丈夫なのか?」景佑が黎慈に疑惑の目を向けた。「しばらく見守ろう」数秒後、少女の体は灰のように崩れ、跡形もなく消えていった。まるで化け物を倒した時のようだった。「消えたな……」黎慈は少女の消え方に強い不信感を覚えた。「景佑、一旦建物に戻ろう」「そうだな」二人は再びダイニングへ引き返した。疲れが一気に噴き出し、二人は床に座り込んだ。天井を見上げながら、黎慈が先ほどの不信感を口にした。「なあ、さっきの少女の消え方、おかしくないか?」「……」景佑も右上に視線をやり、思い出すように言った。「確かに、さっきの消え方…」「化け物を倒した時と同じような……」「ホログラムのような消え方。何かおかしくないか?」黎慈は俯きながら独り言のように言葉をこぼす。「俺らは互いに消えるところを見た事がないから、一概には言えない」「確証はないが…やはりおかしい」二人は顔を見合わせ、重い沈黙を共有した。「戻って衣百合の意見も聞こう。今は外に出る方法を考えよう」「でも、どうやって……」中庭には到底登れない高い外壁がある。正面から出るのは危険すぎる。「上から……」黎慈の独り言に、景佑が反応した。「屋上からってことか」「確かに、それしかないのかもな」この建物の構造が学校と同じであることは、すでに確信していた。屋上があるはずだ。「ものは試しだ。行ってみる価値はあるはず」「じゃあ、行きますか」二人は立ち上がり、屋上を目指した。屋上までの道も廃墟のように静まり返っていた。屋上に着くと、そこも同様に人の気配はなかった。「とりあえずついたが……」「ここからどうするか、だな」二人は屋上の壁に寄りかかり、外の様子を窺った。すると、屋
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第二十五話

二人は衣百合に、昨日夢の核で起きた出来事を簡潔に説明した。「夢の核に、あの女の子、大きな揺れ、かあ~」衣百合は難しい顔で腕を組んだ。「いや、ね?」「実際に見てないからなんとも言えないっていうか……」数秒置いて、彼女は再び口を開いた。「ただ……」「ただ?」「大きな揺れ、が引っかかるよね……」「ああ、全くの同意見だ」黎慈も景佑も同じように首を傾げた。あの揺れは明らかに異常で、地震のような揺れではなかった。まるで世界が鼓動をしているようだった。「今は気にしても仕方ないのかもな」「あの世界で起きる全ての現象に対して」机に突っ伏していた景佑が、ゆっくりと顔を上げた。「それもそうだな」その後は昼食を取り、それぞれ教室に戻っていった。無事に授業が終わり、昨日と同じく部活へ向かおうとしていたところ、教室に亮が現れた。「部活に行こうとしてるところ悪いんだけど、ちょっと付き合ってほしいことがあるんだけどさ、良いかい?」「問題ないよ。先に昇降口に行ってて。部長に連絡してから行く」「ありがとう。じゃあ、また後で」亮が出て行った後、黎慈はスマホで部長に休みの連絡を入れ、昇降口へ向かった。正門まで行くと、亮がすでに立っていた。「早かったな」「そんじゃ、行くか」亮はそう言い、歩き始めた。「ところで、どこ行くの?」「ちょっと服買いたくてさ。近くにある古着屋だよ」「しゃーないな、着いていくよ」二人は歩きながら近況を話した。「そういえば、衣百合となんか進展あった?」黎慈は一瞬動揺したが、すぐに平静を装った。「な、なんもないよ」「いやいや、流石に無理があるでしょ」「たまに寮で話したりしてるじゃん」「なんなら、同じ部活に入ったんでしょ?」「ちょっと仲良すぎじゃない?」黎慈は胸を撫で下ろした。「それは、ただ誘われただけで、特に深い意味は無いっていうか」「本当かあ?」「まあ、あんまり詮索しないんだけどさ」そんな会話をしているうちに、古着屋に着いた。店内にはレトロな洋楽が流れ、ヴィンテージの服が並んでいる。亮はすぐに目当てのパーカーを探し始め、黎慈は店内を眺めていた。店の奥へ進むと、他の商品とは明らかに違う謎の物体が置いてあった。それをじっと見ていると、暖簾の奥から店員が出てきた。「お客さん、それ興味あります?」「
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第二十六話

黎慈は眩しい光で目を覚ました。窓から差し込む輝かしい朝の光に、軽く目を細める。着替えてロビーへ降りていくと、いつも通りの朝が待っていた。4月下旬。色々あった4月上旬から二週間ほどが過ぎた。夢での探索で疲労が溜まっていた二人は、一度休息期間を取ることになった。和寿のタイムリミットはおそらく5月下旬。まだまだ時間はある。そこから黎慈は夢の世界に行くこともなく、普通の学生生活を送っていた。黎慈も学校生活にだいぶ慣れてきていた。いつものようにジャージに着替え、部活へ行こうとする。すると、スマホに連絡が入った。景佑からだった。『今日、久しぶりに行かないか?夢の中に』ここ数日、景佑からの連絡は特になかった。もちろん、夢の中にも行っていなかった。黎慈はすでに万全の体調だったが、景佑の黎慈は返信した。『体調大丈夫なのか?』すぐに返事が来た。『もうバッチリって感じだな』どうやら大丈夫そうだ。『分かった。夢で集合で』『また連絡する』黎慈は部長に部活を休む連絡を入れ、快く承諾してもらった後、寮へ戻った。部屋でスマホを眺めながらリラックスしていると、下の階から衣百合の声が聞こえてきた。「黎慈く~ん!ちょっと下来て~」言われるがままロビーへ降りていくと、衣百合がスーパーの袋を二つテーブルの上に置いていた。彼女は黎慈に気づくと大きな声で呼んだ。「あ!ちょっとこれ冷蔵庫に入れてくれる?」黎慈は片方の袋をキッチンまで運び、食材を適当にしまった。少し時間がかかったが、なんとか全て入れ終わった。「黎慈くん、いきなり呼んで手伝わせてごめんね?」「ここまで持ってくるのに精一杯でさ……」「全然!気にしてないよ。これぐらいお安い御用」「にしては少し疲れてない?」二人は談笑しながらロビーのソファーに座った。衣百合がこちらを見て話しかけてきた。「どう?学校にはだいぶ慣れてきた?」「おかげさまで。衣百合がいなかったら、今頃クラスでどうなってたか……」最初は馴染めなかったが、衣百合や亮のおかげで少しずつ楽しくなってきている。会話をする程度のクラスメイトもでき始めていた。「なら良かった」「ところでさ……」衣百合が声のトーンを変えた。「前に色々話してくれて、夢にもいたあの子いたじゃん?」おそらく、夢で異様な消え方をした一年生の女
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第二十七話

二人は再び夢の核を目指して歩き出した。道中、何度か化け物に遭遇したが、ブラムを駆使して難なく撃退しながら進んだ。周囲の空気は重く、足を進めるたびに緊張が募っていく。おそらく夢の中に久しくきていなかったからだろうか。体が重く感じられる。黎慈は前回とは違う正面からの侵入に、内心で警戒を強めていた。やがて目的地に到着した。黎慈にとっては、正面から入るのは初めての試みだった。まずは景佑を先頭に安全を確認し、手の合図で中へ入った。正面は広いロビーのような空間になっていた。幸い、敵の姿は見当たらない。「あれ?前回来た時はうじゃうじゃいたのに……」景佑が奥の方を目を細めて見ながら首を傾げた。「とりあえず進もうぜ」黎慈の呼びかけに景佑が頷き、二人はさらに奥へと進んだ。右側にある大きめの扉に景佑が進むのを見て、黎慈も後を追った。扉を開けると、そこは長い廊下だった。壁には前回と同じように肖像画が飾られている。足音を殺しながら進んでいると、誰かの話し声が聞こえてきた。どうやら右側の部屋からだ。二人はそっと近づき、聞き耳を立てた。「あと半月ぐらいで消えるらしいじゃん?ここも」「え、マジ?また前のとこと同じになんの?」「せっかく住み心地良かったのに……」「まあしゃあないっしょ?いつかはこの世界も無くなるわけだし」世界が無くなる?「てか消えるってことは、前と同じくニンゲン?ってのが来るのか?」「さあな。でも主人が言ってたからそうなんだろ」「またあのクソめんどくさい“あれ“やんなきゃいけないんだろ?」黎慈と景佑は目を見合わせ、一旦その場を離れることにした。ロビーに続く扉を開ける。ロビーに続く扉を開けると、来た時には誰もいなかった階段の踊り場に誰かが立っていた。その前に、二人は突然の気配を感じて身構えた。さらに、廊下の奥から数体の鎧姿の兵士が現れた。「侵入者だ!捕らえろ!」兵士たちが一斉に武器を構えて突っ込んでくる。黎慈は即座にブラムを起動させ、先頭の兵士に向かって手の平を突き出した。触れた瞬間、爆発が起こり、兵士の胸部が灰となって崩れ落ちた。「景佑、右!」「了解!」景佑はブラムを連射し、レーザーのような光の弾を浴びせて二体の兵士を同時に焼き払った。しかし、残りの兵士が左右から挟み撃ちにしてくる。黎慈はスライディ
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第二十八話

二人は城壁に腰掛けた。状況を立て直すことにした。「どうするよ。あれ」黎慈は真っ当な考えが出てこなかった。「ぶっちゃけ、あの力は俺たちの持っているブラムよりも格上だ」今勝つ方法は無いに等しいだろう。二人はそう感じていた。「あいつしかいなかったら正面でもやれそうだが…」「でも、あの少女が言うには、夢で殺したら現実でも…」現実でも死ぬ。そう決まったわけではないが、助けた女子生徒の前例を考えると現実にも何らかの影響があるのは確かだろう。そう考えを巡らせていると、景佑が何かを思いついたようだ。「なあ黎慈。前に少女にこの世界について説明を受けたのを覚えているか?」「ああ、もちろん」「その時にさ、『夢の主人が並外れた欲望がないと具現化しない』みたいな話をしていたよな」「この話、使えそうじゃないか?」黎慈の頭には困惑が浮かんできていた。景佑はその黎慈の様子を汲み取り、詳しく説明を始めた。「この世界で起きたことが、現実でも影響がある」「この話が本当なら、逆説で現実で何らかの作用を起こせば、夢の世界も影響が出るんじゃないか?」「あくまで仮説だが…」確かに、使えるかもしれない。二人はこのことを衣百合に相談するために、一度現実へと戻った。「ふーん。なるほどね」放課後に集まった三人は、衣百合にその仮説を説明した。「多分なんだけど、夢で起きたことは夢の主人は覚えてないんだと思うよ」「前に生徒会で少し話した時にサラッと聞いてみたんだけど、覚えてない様子だったよ」また話が変わってくる。三人は黙り込み考えを巡らせていた。「もしかしたらだけど…」衣百合が静寂の中、話し始めた。「景佑の仮説通り、現実で何か強烈な印象を残すことができれば、それが夢の中にも反映されるのかもね」「現実であの人に何かを強く意識させれば、夢の中でもその影響が出る…はず」衣百合は少し自身がなさそうだった。だが、現実で実害が出ているのも事実だ。どうにかして解決しなければいけない。「とにかく強烈な感情や印象を現実で植え付けて、夢の中でその力を弱める方法があるかもしれない…」少し間を置き、景佑が話し始めた。「その行動を起こすためにも、しばらくは証拠を集めるために、主任を監視しよう」「確固たる証拠があれば、こちらも行動を起こせるわけだし」二人は景佑の提案に呼応
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第二十九話

二人は教室の中に入り、黒板の前でうずくまっている女子生徒の元まで行った。脇腹を抑え、苦痛の表情をしていた。「大丈夫か?怪我は?」黎慈は反射的にその女子生徒に手を差し伸べていた。女子生徒はその手を振り払い、床に落ちていたバッグを持って立ち上がった。そして、何も言わずに教室の扉の方に歩き始めた。黎慈は咄嗟に彼女の肩に手を掛けた。「待ってくれ!まだ聞きたいことが…」女子生徒は手を振り解くように素早くこちらを向いた。「うっさい。死ね。お前らには関係ないだろ」肩から手を振り落とし、そのまま教室を出て行った。二人残された教室には静寂だけが呼応した。「ひどいな…」黎慈は頭をガクンと落とし、見るからに落ち込んでいる。景佑は口から吹き出しそうなのを堪えていた。「いや笑わんでよ…」「いや笑ってない」絶対に嘘だ。心の中で絶対爆笑してる。そんな風にふざけ合っていると、景佑が話し始めた。「まあ、とりあえず“何か“が行われているのは分かったんだ」「これを衣百合にでも報告すれば、色々調査してくれるだろう」「それもそうだな」黎慈は一つ疑問に思っていた事があった。「…これも共通夢に関係あるのか…?」「最初の方に聞いたセクハラの共通夢か?」景佑の発言に黎慈は頷く。「どうだろうな。その辺も衣百合に調べてもらおう」「どちらにせよ、犯罪行為を犯しているのは間違いないだろうな」「これで行動を起こすこともできる」景佑の言う通りだ。和寿の過去の記憶を見て少し同情していた部分もあった。だが、同情する余地もないことが今日で分かった。そうして二人は帰路についた。黎慈が寮に着くと、ロビーに衣百合がいた。どうやら本を読んでいるようだった。玄関の扉が開いた音に気づかないほど没頭している。黎慈は一旦、自分の部屋に戻り、荷物を置いて一階に戻った。衣百合はまだ本を読んでいた。黎慈は衣百合の正面にあるソファーに座った。数分間、眺めていたが特に気づく様子がなかった。話しかけてみた。「あのー衣百合さん?気づいてます?」衣百合はハッとした表情で本を閉じた。「えっと、いつからいた?」「5分前くらいかな」「全然気づかなかった…」黎慈は学校であったことを衣百合に話した。「教員が生徒に暴力…」「本当だったら早急に解決しなきゃいけないね」「分かった
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