蒼真は一瞬沈黙し、彼女の問いには直接答えず、静かに話題を逸らした。「結城さんのダンスは本当に素晴らしかった。長年、血の滲むようなレッスンを積んでこられたのでしょうね」彼女は微笑んで頷いた。「一条社長は、ダンスにもお詳しいのですね?」蒼真は薄く唇の端を上げた。「詳しいというほどではありませんが」紗雪の笑顔は、さらに眩しく花開いた。「ご謙遜を。私……一途で情の深い男性って、すごく素敵だと思うんです。皆様のお話を聞いて、社長と奥様のラブストーリーにとても興味が湧いてしまって。もしよろしければ、少しお話を聞かせていただけませんか?」蒼真は周囲の騒がしい招待客たちをぐるりと見渡し、低く落ち着いた声で提案した。「結城さんがよろしければ、あちらの庭園のテラスで少し休みませんか」紗雪は優雅に手を差し伸べた。「ええ、ぜひ。喜んでお供しますわ」二人はワイングラスを片手に、喧騒から離れた静かな庭園へと向かった。静寂に包まれた夜の空気は、人の心の防壁を緩ませ、本音を引き出しやすくする。蒼真は目の前に座る紗雪をじっと見つめていた。なぜだか分からないが、彼女に対して得体の知れない「懐かしさ」や「親しみ」を感じ、気づけば誰にも言えなかった本音を吐き出したい衝動に駆られていた。「結城さん……あなたは本当に、私の亡くなった妻にそっくりだ」紗雪は小さく頷いた。「先ほどの皆様のお話で存じております。一条社長と奥様は、どのようにして出会われたのですか?」蒼真は遠い記憶に思いを馳せるように目を伏せた。「私たちは幼馴染みで、幼い頃から一緒に育ちました。そして大人になり、両家の取り決めで政略結婚をし……子供をもうけました」紗雪は途端に、夢見るような羨望の眼差しを向けた。「まあ、なんてロマンチックなの。幼馴染みから結ばれるなんて、誰もが憧れる純愛ですわ。それに、お子様もいらっしゃるんですね。おいくつですか?きっと、すごく可愛いんでしょうね!」蒼真は普段、ここまで矢継ぎ早に質問をしてくる女をひどく嫌悪していた。しかし不思議なことに、目の前の彼女に対しては少しも鬱陶しいとは思わず、むしろ丁寧に答えてやりたいとすら思っていた。「息子が一人います。今年で五歳になります。結城さんは……随分と子供がお好きなんですね」彼
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