広い式場が、まるで時が止まったように静まり返った。スクリーンのニュース番組の音だけが、無機質に響いている。晴香の顔から一瞬にして血の気が引き、彼女は慌てて後ずさると、遠時の後ろに身を隠した。しかし、入口に立つ夏美の微笑む姿が目に入り、晴香は大きく目を見開いた。「あんたなのね!あんたが全部仕組んだんでしょ!」「ご同行願います」警察が晴香の両腕を拘束すると、冷たい手錠の感触に彼女は取り乱す。「放して!私は遠時の妻よ!こんな真似をしてタダで済むと思ってるの!?遠時、助けて!」しかし遠時の視線は、入口に立つ夏美へと釘付けになっていた。黒いドレスに身を包んだその姿は、まるで二人の破滅を告げに来た弔問客のようだった。この1ヶ月、自分が血眼になって探し続けた人。その姿を見た瞬間、心臓が爆発しそうなほど高鳴る。やはり夏美は自分がほかの女と結婚するなど、黙って見過ごせなかったんだ。遠時は思わず一歩踏み出したものの、夏美の瞳には愛の欠片もなく、底知れぬ憎悪だけが冷たく宿っていた。動揺した遠時。これまで自分のしてきた行いが、初めて心から悔やまれた。夏美の冷たい視線に耐えきれず、遠時は目の前の警察を突き飛ばすと、夏美のもとへ大股で歩み寄った。「夏美!一体、どこにいたんだよ!」しかし次の瞬間、遠時は警察に羽交い締めにされ、地面に押し倒された。「橘社長、あなたも容疑者の隠匿および偽証の罪に問われています。ご同行お願いできますか?」「邪魔するな!」遠時は警察を殴りつけ、夏美から目を離さない。すると警察が警棒を抜き、遠時の背中を力任せに打ち据えた。よろけながら数歩進んだところで、遠時は地面に倒れ込んでしまった。だが、意識が遠のく中も、執拗なほどに夏美の方を凝視し続けていた。その様子をただ静かに見つめる夏美の目元には、わずかな喜びが浮かんでいる。関係者が連行されていく中、参列者たちは文句を言いながら帰っていった。今世紀最大の結婚式と謳われたこの式は、滑稽な笑い話として幕を閉じたのだった。車から男が降りてきて、自身のコートを夏美の肩にかけた。「満足した?」夏美は冷酷な笑みを浮かべる。「私の痛みはこんなもんじゃないから。復讐はまだ始まったばかりだよ」その男の名前は、神崎朔夜(かんざき さくや)。江川市の神崎家の長男で、昨年自ら夏
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