腐った肉が弾け飛ぶ。腐った肉が弾け飛ぶ。肉が、肉が、肉が、べちゃりどちゃりと雨の如く降り注ぐ。 乱打、乱打、乱打。 鎖に繋がれた黒い棺が宙を躍る。腐った竜の全身が打ち据えられ、頬骨が、大腿骨が、肋骨が背骨が尾骨が露出する。 乱打、乱打、乱打。 露出した骨が繰り返し打たれ、ひび割れ、へし折れ、剥がれ落ちる。床に積もった腐肉の上に、骨の欠片が重なる。 乱打、乱打、乱打。 竜の身体が徐々に縮む。打たれるたびに小さくなる。威容を誇った巨体がただの肉塊に解体されていく。 頭骨に鉄棺が振り下ろされる。無数の破片に割れて散る。後に残ったのは一面に広がる肉と骨と溶け落ちたはらわた。その中に立つ、棺を背負った白い裸身。赤と黒を出鱈目に混ぜた絵の具の上に、白を一筋垂らしたような。「うはははは! うはははは! わたくしめの竜を一蹴! なんという苛烈! なんという可憐! 僭越ながらこの美にもう一色を加えましょう!」 腐肉にまみれた道化師が蜥蜴の指で天を指す。天井が割れ、緑色の粘液が滝のように降り注ぐ。白い裸身が半透明の緑に覆われる。通路の天井まで届く粘った塊がエンバーの身体を飲み込んでいた。「丹念に丹精に蝶よ花よと手塩にかけて育てたグリーンスライムでございます。まっとうに貴女を打ち倒すことを願うなら地上に太陽でも召喚せねば不可能でしょう。しかしッ! 封じ込めることならばどうかッ!」 道化師の手から水色の花びらが放たれ、スライムを包み込む。花びらがスライムに張り付くたび、その箇所が瞬時に凍りつく。数瞬の後には緑の氷山が出来上がっていた。氷山の中心には棺を背負った裸身の女。「傷は塞がりましょう。欠けた身体も再生しましょう。灰の一片まで焼き尽くそうとも、棺の中から復活されましょう。しかし、しかし、しかししかししかし、これならいかがでしょうか? 千年万年凍り続ける氷の棺でございましたらッ!」 道化師は氷山を這い回り、あらゆる角度から氷漬けのエンバーを舐めるように眺める。エンバーは目を見開いたまま凍りつき、指一本も動かさない。「うはははは! いひひひひ! 完璧だ! 時よ止まれ、お前はなんと美しいッ! ……ぎゃうっ!?」 道化師が地面に落ちる。その背中には2本の楔状の武器が刺さっていた。「このキモいのがエンバーが追っかけてったやつ? って、エンバー凍ってんじゃん!?
Última actualización : 2026-07-13 Leer más