夫の愛人と子を救った夜勤の緊急オペ
夜勤中、緊急オペの連絡が入った。
私、相原莉都(あいはら りと)のもとに運ばれてきたのは、若い女性だった。
夫との行為が激しすぎたせいで胎児に負担がかかり、大量出血を起こしていた。
手術中、彼女は怖いからと、どうしても私と話したがった。
「先生、結婚してるんですか?」
私は小さく頷いただけで、何も言わなかった。
「先生は知らないと思いますけど、うちの人、肌が触れていないと落ち着かないんです。私だけが落ち着かせてあげられるから、毎日どうしてもって求めてくるんですよ。
正直、体はかなりきついです。でも嬉しいんです。だって、それだけあの人が私しか見てないってことじゃないですか。
先生の旦那さんも、先生のことを強く求めてくれますか?」
その言葉に、欲とはいちばん縁遠そうな顔が、ふと頭に浮かんだ。
私はやはり何も答えなかった。
手術が終わり、私は彼女を乗せたストレッチャーを押して、手術室の外へ向かった。
「鳴海結愛(なるみ ゆあ)さんのご家族はいらっしゃいますか?」
「俺です」
その声を聞いた瞬間、私はその場で凍りついた。
声の主は、「修行中だから、3年間はそういうことをしない」と言い続けていた、私の夫――鳴海英孝(なるみ ひでたか)だった。