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6・不審な女

Author: 揚羽渓名
last update publish date: 2026-06-24 21:46:27

 あんな事があった翌朝、俺は隣で裸のまま呑気に惰眠を貪るダリアを見下ろしてため息をついた。 

 この女は一体何者なんだ? 本当に慰み者として招集された女なのか? 何かの手違いで紛れ込んだサキュバスではないのか?

 そんな疑問が次から次へと脳裏を過る。

 俺は落ちていたドレスをダリアに着せると毛布をしっかりかけて天幕を出た。

 戦場へ向かい味方陣営のテントに入ると、そこには別の場所で野営している友人であり部下でもある宰相のアーノルドと、同じく友人で騎士団長のセルクが渋い顔をして戦況図を覗き込んでいる。

「どうだ?」

「ああ、オズ、おはよう」

「オズ、今日はゆっくりだったな。ん?」

 セルクは振り返るなり俺の顔を見て首を傾げた。

「なんだ」

「いや、何か今日は随分と機嫌が良さそうだな」

「そうか?」

 言われて俺は気づく。確かにいつもよりも身体が軽い気がする。そう、まるで三年前のように。

「言われてみれば……何か良い事あったの」

「特に無いな」

 これは嘘だ。良いことならあった。何せどれほど頑張っても、何をしても勃たなかったこの俺の息子が、たった一度とは言え勃った上に射精まで出来たのだから。

 けれどこれは絶対に言えない。俺は真顔で答えると、戦況図を覗き込んで地図を指差す。

「ここから攻めてはどうだ。騎馬隊をここに配置し、一気に叩く」

「それは良いけど、そんな技術がうちの騎馬隊にあると思う?」

「ある。もちろん報奨も出す。今回は手強い。ここで叩いておかないと、あちらのマシューが出てくると厄介だ」

 マシューは隣国の英雄だ。気高く勇ましく美しい、白亜の騎士と呼ばれる程の剣の腕の持ち主で、あの男が出ると必ず相手国は負けるとまで言われている。

 実際マシューが制した戦争は数知れず、今回は初めてうちとの一騎打ちになるという事で話題にもなっていた。

 この時代の戦争は、はるか昔の戦争とは違って明確なルールがいくつも設けられている。戦争に負けたからと言ってその国がどこかの属国になる事はないが、国のランクが落ちるのだ。ランクが落ちると世界会議で意見が通りにくくなってしまう。予算が減らされ、それこそ国民を養えなくなってしまう。だから何としてでもこの戦争には勝たなければならない。

 俺達はそれぞれに指揮を執り、今日も戦いに明け暮れた。

 日が傾き、今日の戦いが終わってアーノルドとセルクと共に近くの温泉に向かい明日の指標を立ててから慰み者のテントであのリストを借りてもう一度目を通したが、そのどこにもダリアという名前は無かった。

 私はオズワルドのベッドで目を覚ました。あれほど脱ぎ散らかしたドレスを私はしっかりと着込んでいて、ちゃんと毛布までかけられている。

「ふぁ……ねっむい」

 結局オズワルドの頑固な屹立が射精するまで朝方までかかってしまってすっかり寝不足だ。

 私は大きく伸びをして天幕から出ると、天幕の前に真っ白の軍服を着た兵士が険しい顔をして立っている。

「おはようございます。お勤めご苦労さまです」

 そう言って私が天幕から去ろうとすると、目の前を剣で塞がれた。

「駄目だ。今日はお前をこの天幕から出すなと言われている。食事もここに運ぶ。お前は今日は戻れんぞ!」

「はあ、分かりました」

 食事を運んでくれるのなら別に文句は無い。

 私の反応にキョトンとしている兵士を横目に天幕の中に戻ると、しばらくして食事が運ばれてきた。それはこの世界にやってきてから初めての豪華な食事で、思わずゴクリと喉を鳴らしてしまう。

 ところでオズワルドというのはどれほどの地位の人間なのだろうか。こんなにも豪華な天幕を充てがわれるだなんて、きっと思っていたよりもずっと地位の高い人間なのだろう。そんな人が勃たないだなんて、そりゃ誰にも言えないだろう。

「なんか可哀想……仕方ないから治してやるか~」

 お店にはオズワルドのような人も沢山居た。虐めてもらわないと勃たない人や、虐めないと勃たない厄介な人たちが。もしかしたらオズワルドもその類なのかもしれない。

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