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第15話

Author: るるね
last update publish date: 2026-04-02 23:47:24

 紗月はさらに強く下唇を噛みしめた。

 唇に走るかすかな痛みだけが、胸の奥で渦巻く感情をどうにか押し留めてくれる。

 背後の声が聞こえなかったふりをして、店員に小さく頷き、そう答えた。

「……はい、お願いします」

「お客様、商品の最終確認はよろしいでしょうか。当ブランドでは、重大な不備がない限り、ご購入後の返品は承っておりません」

 店員はそう言いながら、確認のためにもう一度懐中時計を手に取り、紗月の前に差し出した。

 紗月としては、もはや確認する必要など感じていなかった。

 だが、店員がそれを持ち上げた瞬間、少し離れた背後にいた由衣が急に興味を示したように、まるで紗月のことなどまったく知らないかのような顔で、軽やかにこちらへ歩み寄ってきた。

 そして、その懐中時計を見て、感嘆の声を漏らす。

「わあ……すごく綺麗」

 店員も流れるように身体を少しずらし、由衣にも見えるように商品を向ける。

「はい、お客様。こちらは今回の新作の中でも特に人気の高いお品でして、デザインも宝石のあしらいも、男女問わずお使いいただけます。ただ、特に若い女性のお客様からご好評をいただいております」

「いいですね
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