LOGIN
信也がまたついてこようとするのを見て、莉亜の顔にはもう明らかな不機嫌な表情が浮かんでいた。今日は確かに朔也と用事があったのだ。先日、オフィスビルの場所を決めたばかりで、今度は専門的なオフィス用品を調達する予定だった。こうした初期作業はすべて自分たちでやらなければならない。莉亜自身もこの作業を楽しんでおり、面白さを感じていた。専門の業者に任せるつもりもなかったが、朔也はいつも忙しかった。ようやく朔也が時間を捻出してくれたというのに、まさか途中で他人に邪魔されるとは思わなかった。そう思うと、莉亜の表情はかなり険しくなり、信也を睨みつけて不機嫌そうに言った。「私たちの提携はとっくに決まっていることで、今のところ新しい提携先を探す予定はありません」この言葉はもう遠慮のかけらもなかった。しかし信也は莉亜の意図に気づかないふりをして、無理に絡もうとした。彼は相変わらずへらへらと笑いながら言った。「とにかく、友達が多いほど道も広がるってもんでしょう。将来、本当に提携できるかもしれないじゃないですか?」朔也ももう我慢の限界だった。「もういいだろう。俺たちは二人で仕事に行くんだ。無関係の人間はついて来る必要がない」ところが信也は朔也を一瞥し、目玉をくるりと回して、突然何か名案を思いついたような顔をした。彼は朔也に近づいて言った。「朔也さんが潤さんのお兄さんで、俺は彼の友達です。つまり俺たちも友達ってことになるんじゃないですか?だから、俺を助けてくれませんか?」そう言いながら、彼は朔也にウインクした。そして視線を莉亜に向けると、その欲望を隠す気がすでにないような様子だった。莉亜は彼らを無視して先に歩き出した。朔也も後に続こうとしたが、信也に引き止められた。「朔也さん、俺に力を貸してくださいよ!今、小鳥遊さんとは仲が良くて、ビジネスパートナーでもあるんでしょ。彼女を口説きたいんですけど、何かアドバイスをくれませんか?」信也の言葉に、朔也は元々不満だったのが、さらに怒りが込み上げてきた。しかし、何か言おうとして、ふとあることを思いつき、口調を緩めて尋ねた。「なぜ急に彼女を口説きたいと思ったんだ?彼女が弟の妻だってことは知っているんだろう?」この言葉は本心ではなかったが、話を引き出すためには構っていられなかった。
莉亜は最初、挨拶だけして立ち去ろうと思っていたが、この男がしつこく食い下がってきた。莉亜が彼を一瞥すると、この男は潤目当てではなく、むしろ自分を狙いに来ているのではないかと気づいた。信也は、莉亜の目に浮かんだ苛立ちに気づいていないようだった。「このデパートは俺はかなり詳しいんですよ。数日前にも来たばかりでね、よかったら一緒に回りませんか」彼は自然に装って莉亜を誘ったが、莉亜は無理やり笑みを浮かべただけだった。「すみません、今日はもう同行者がいるんです」ちょうどその時、朔也が電話を終えて戻ってきて、一目で莉亜の向かいに男が立っているのを見た。その男は雄の鳥類が自分の美しい羽根を強調して雌の注意を引こうとしているように莉亜に話しかけている。それにしゃべるだけでなく、身体の動きでも加えて莉亜への興味を示していた。朔也の顔はたちまち曇った。信也も朔也に気づき、彼が誰なのかを知っているが、朔也は莉亜の義兄として、ただ彼女に付き添って用事を済ませに来たのだろうと思っていた。「相馬さんもいらしてたんですか?昨晩、弟さんと一緒に酒を飲んでいたんですが、その時もお兄さんの話題が出ましたよ」実は、潤が大げさに、朔也が相馬家の実子ではない、養子として相馬家はもう十分に与えてやった、などとずっと言っていた。その後、潤は酔っ払って、朔也が欲張りで何でも欲しがると愚痴っていたが、周りが朔也が具体的に何をしたのか尋ねると、彼ははっきり答えずにごまかしていた。信也はこの件にいくぶん疑問を抱いていたが、今、朔也を目の前にしても、深く考えることはしなかった。「今日は小鳥遊さんに付き添って、お仕事ですか?」口調はまだ丁寧だった。朔也は相手にするのが面倒で、ただ莉亜に言った。「行こう。もう手配は済んだから」莉亜もうなずき、彼と共に立ち去ろうとしたが、信也は自分が無視されたことに不満を覚えた。「お二人はこれから何を?私は小鳥遊さんに付き合うって言ったんです。私も連れて行ってくれませんか?」この男はなぜ金魚の糞のように、せっせとついて来るのだろう?莉亜は心の中で毒づき、振り返って不機嫌そうに言った。「すみません、これから提携先と会う予定なんです。先日の騒ぎはご存知でしょう?」信也は頭を軽く叩いて、ようやくあのオークションのこと
莉亜はその言葉を聞いて、目を見開いて、すぐに朔也の意図を理解した。「さすが、年の功っていうものね」しかし、朔也に不機嫌そうな低い声で「俺が年上だから嫌だって言うのか?」と問われた。莉亜は笑いながらその場を離れ、さっさと自分の部屋に逃げ込んだ。その夜、あるバーで。潤はグラスを手に、嬉しそうな様子で皆に言った。「さあ、久しぶりに会ったんだから、今日は俺のおごりだ!」「おや、相馬さん、今日は太っ腹ですね。最近何か良いことでもあったんですか?」「このところ、相馬さんの会社の株価も上がってるみたいだし、奥さんともますます仲良くなってるって聞きますけど……」「何言ってるんだ、お前、それでも相馬さんと友達だって言えるのか?相馬さんがもうあの女と離婚しようとしてるのを知らないのか」周囲からはすぐにそんなお世辞の言葉が飛び交ってきた。潤はそれを聞くほどに、ますます喜びを抑えきれなかった。今回、自分が証拠を提出した時、弁護士も勝算は大きいと言っていた。しかも、それはすべて莉亜と朔也の浮気の証拠であり、莉亜に一円も渡さず追い出すことができる!かつて莉亜に自分と美琴の関係を暴かれた時は、すべて終わったと思ったものだ。特にその後、莉亜の方から彼との関係を清算しようと申し出てきた時はこの世が終わるんじゃないかと思ったほどだ。しかし、今回は自分が勝訴するに決まっている!そのため、周囲のお世辞に対して、潤は考えもせずに言った。「確かに彼女と別れるよ。しかも、あのバカ女に一円も渡さず追い出してやれるぞ!」明らかに酔いが回っていた。今日は気分が良すぎて、バーに入るなり何杯も飲んでいた。特に、おごると言い出した辺りから、周りがさらに盛り上がり、潤はつい口を滑らせてしまった。その悪友たちは顔を見合わせた。その中の一人が目をぐるりと回し、すぐに名案を思いついて、潤に近づいた。「つまり、彼女には何も渡らない勝算があるってことですか」「当たり前だろう。今回はあいつが俺に対して不誠実な行動を取ったからな。弁護士も、今回の訴訟は俺の勝ちが確実だと言ってた」ここまで言った以上、潤も隠すつもりはなかった。ただし、どうやって莉亜の浮気の証拠を手に入れたかについては、一切口にしなかった。潤が酒を飲む様子を見ながら、隣の男が仲間にささやいた。
美琴はすぐに素直な態度をして答えた。「分かった、分かったから。言う通りにするから」しかし、自分の部屋に戻るなり、美琴は得意げな表情を浮かべていた。長い間待ち望んでいたことが、ついに現実になろうとしている!しかも彼らは、莉亜と朔也の実際に交際している証拠をはっきりと掴んでいる。彼女は携帯を睨みつけ、考えるほどに、以前莉亜にかけられた数々の屈辱を思い出し、必ず仕返ししてやると誓った。数日前のチャリティーオークションで、莉亜が美琴に与えた大きな屈辱は、まだ生々しく記憶に残っている……莉亜はあの時、美琴には何の取り柄もなく、会社をクビになったばかりなのに、司会者として呼び戻されたのは、潤が彼女の若さと美貌を気に入ったからに違いない、とさえ言った。その言葉がずっと美琴の頭の中にこびりついていた。なぜだ?なぜ莉亜は欲しいものを何でも簡単に手に入れられる!自分は会社で長い間、誠実に働いてきた。特に仕事の能力が優れているわけではないが、それでも潤のために多くの問題を解決してきた。それなのに、なぜ莉亜は指一本動かすだけで朔也を味方につけ、あの株主たちの前で直接自分を解雇させることができたのか?自分の経験した多くの出来事を思い返すたびに、美琴の心の底から込み上げてきた悔しさが彼女の思考を奪おうとしていた。彼女は携帯を手に取り、迷わずあるアプリを開き、何かを打っていた。その夜、莉亜は久しく開いていなかったSNSアプリを開いた。目の前に飛び込んできたのは、知り合いかもしれないとお勧めされて出てきたアカウントだ。莉亜は気にせずそれを閉じようとしたが、少し見覚えのあるアカウントが目に入った。莉亜は興味本位でそれをクリックした。しばらく見ただけで、それが美琴のアカウントだと判断できた。なぜなら、そのアカウントにこっそりと恋人とのエピソードを見せびらかしている投稿がいっぱいだったからだ。しかも、美琴のメインに使っているアカウントが慎重にそれを隠している投稿とは対照的に、このこっそりと使っているアカウントの投稿はかなり露骨だった。中には、潤の横顔がはっきりと写った写真も何枚もあった。特徴が明確で、すぐに彼だと分かった。莉亜が下にスクロールするほど、二人の愛を誇示する内容が次々と現れ、以前に自分が調査していなか
莉亜が突然こんなに多く反論してくるため、向こうの潤は明らかにまだ反応できずにいた。彼が莉亜の言っている内容を理解した時には、顔色はさらに悪くなっていた。莉亜は、暗くなった潤の顔を見て、自分もこれ以上話す気が失せた。潤が口を開く前に、莉亜はさらに続けた。「私が早く別れたいのは事実だけど、あなたも同じでしょ?生田さんはもう妊娠してるんだから、毎日あなたに早く私と別れろ、自分こそが本当の相馬夫人だとみんなに紹介しろってせがんでるんじゃないの?」莉亜は語れば語るほど、その口調は皮肉に満ちていった。その言葉を聞いて、潤の顔色はもう言葉で形容できないほど悪くなった確かに、このところ美琴はずっと潤に早く莉亜との関係を清算しろと催促していた。実のところ、潤は乗り気ではなかった。こうして莉亜と別れて、しかも財産の大部分を奪われるなんて、潤には到底納得できなかった!しかし、そうしなければどうなるというのか?目の前で莉亜がますます図に乗る様子を見せられ、先ほど心に湧いた疑念もすべて打ち消されてしまった。どうやら莉亜は、追い詰められないと弱さを見せないつもりでいるようだ!「分かった、そこまで法律を通じたいなら、望み通りにしてやろう」潤は否定するのも面倒になり、そのまま立ち去ろうとした。しかし莉亜は逃さなかった。「私にあなたの小賢しい企みや本性を見破られて、今は怒り狂ってるんじゃないの?本当に言うとおりにできるならいいけど、こそこそと資産を移したりしないでよ。前回も言ったけど、そんなずる賢い真似はしないで!」莉亜の言葉に、潤はサッと振り返った。「安心しろ。どんなことがあっても、この件に関してはお前に妥協も譲りもしない!」そう言い捨てて、そのまま立ち去った。莉亜はその場に座ったまま、淡々とした様子で目の前のカップを手で包み込んだ。だから最初から分かっていた。この男とは会うべきじゃなかった。彼は自分が言い負かされると、いつもあれこれ理由をつけてくる。潤の様々な反応から、莉亜は彼がおそらく自分との関係を修復するのを諦めているだろうと気付いた。今の潤は、まるで絶望した男のように見えた。おそらく頭の中は、どうやって最大限に資産を移し、莉亜と別れる時、より多くの利益を引き出すかでいっぱいだろう。どうやら帰
潤は冷ややかに莉亜のほうを見つめた。「俺たちはまだ正式にこの関係を清算していない。このタイミングで証拠を提出して訴訟を起こせば、俺に有利になるのは分かっているな?」少なくとも、自分と美琴はこれまでうまく隠し通してきた。莉亜は決定的な証拠を何も出していない。弁護士の話では、もし自分が朔也と莉亜の写真を提出すれば、形勢を逆転できるかもしれないという。莉亜は無頓着な様子で、目の前の紅茶が入ったカップを両手で包み込み、のんびりとした口調で言った。「どうしても法的な手段を取りたいなら、勝手にすればいいわ。私は別に構わないから」潤はたちまち怒りを募らせた。「今やお前が俺に対して不誠実な事をしたんだぞ。それなのに、その当然のような態度は何だ!言っておくが、明日にでも法的な手段を取ってやるぞ!」莉亜は依然として座ったままで、落ち着き払った態度は微塵も変わらなかった。「私の答えはさっきと同じよ。勝手にしなさい」莉亜があまりにもあっさりと承諾したことで、潤は逆に躊躇し始めた。このところ次々と起きる出来事が、莉亜はそんなに単純な女ではないと、はっきりと証明している。この件には、何か罠があるのではないか?潤は考えれば考えるほど焦り、あらかじめ用意しておいた賠償金の契約書を取り出し、長い間莉亜を見つめた後、結局それを差し出した。「実はその賠償金を少し減らしても、お前にとってもそれほど大きな損失にはならない。一度見てから決めてもいい」彼は用意した書類を差し出した。白紙に黒々と記された文字を一目見て、莉亜はほとんど迷うことなく言った。「それは持って帰りなさい。あなたが自ら決めた契約書の内容なんて、私にとっては間違いなくメリットが少ないものよ」見るまでもなく、潤が価値のある資産の大半を自分の名義に書き換えていることは明らかだった。「あなたの性格からすると、今頃は私に一円も渡さず追い出したくて仕方ないんでしょ。私に多くの財産を残そうとするわけないでしょ?」莉亜にそう言われて、潤は慌てた。「デタラメを言うな!俺は自分の手で稼いだものをいくつか取っただけだ。例えば会社の株式とか……」この策は、彼が以前から考えていたことだった。莉亜の浮気の証拠を掴んでから、正式に計画を実行に移すつもりだった。もともと潤は法的な手段を取れば、莉亜に直接