「朱里、君のそういうところが嫌だったんだ。愛とか信頼とか言いながら、結局は体面とお金がすべてじゃないか。そんな嘘の塊みたいな君に、九龍グループの看板を背負う資格なんてあるはずがない」 四方八方から向けられる、無数の軽蔑の視線。 カメラのレンズが、一斉にこちらの表情を追い詰めるように狙いを定めている。 過去の恥部を晒し、公の場で「嘘つき」の烙印を押されること。 それは、想像していた以上の痛みと重圧を伴うものだった。 膝の上の手が微かに震えそうになる。 だが、湊の掌がその震えを包み込み、絶対に逃がさないというように強く握り締めてくれた。 手のひらから伝わる熱が、冷え切った血流を再び全身へと勢いよく巡らせていく。 ――もう、逃げない。 背筋を真っ直ぐに伸ばし、マイクに再び口を近づける。「……確かに、私たちの始まりは嘘でした」 会場の騒音を切り裂くような、静かで、しかしよく通る声がスピーカーから響き渡った。「見栄と、虚勢と、お金で縛られた契約関係。誇れるものなんて何一つない、泥沼のような、最低の始まりでした。……自分がどれほど愚かで、惨めなことをしたか、痛いほど理解しています」 美咲が、さらに言葉を被せようと口を開く。 だが、それを許さないほどの強い視線を、真っ直ぐに美咲と拓也の顔へと叩きつけた。「でも」 マイクを握る手に、さらに力を込める。「嘘から始まったからといって……一緒に過ごした時間や、分け合った体温、互いを信じようともがいた日々までが、嘘になるわけじゃありません」 美咲の口の動きが、ピタリと止まった。「私たちが契約書という紙切れで繋がっていたことは事実です。でも、その紙切れ一枚の向こう側で、私たちは本音をぶつけ合い、傷を晒し合い、誰にも言えなかった孤独を分け合ってきました」 隣に座る湊の横顔を見る。 あの狭いアパートの部屋で、インスタントの安っぽいコーヒーを一緒に飲んだ夜。 九龍という巨大な家の重圧に押し潰されそ
Last Updated : 2026-06-02 Read more