真っ白に弾けるフラッシュの波が、網膜の裏側に焼き付いては消えていく。 カシャカシャという硬質なシャッター音が、幾重にも重なって鼓膜を打ち据える。 無数のレンズの放列の前に立ち、ミッドナイトブルーのシルクドレスの裾をわずかに引いて姿勢を正す。隣に立つ濃紺のスーツの袖が軽く触れ、そこから伝わる岩のような硬い熱が、背筋を真っ直ぐに支えていた。 飛び交う無遠慮な声や、好奇の視線。だが、そこに張り詰めたような焦燥はもうない。 肺の奥までゆっくりと空気を吸い込み、口角を上げてカメラの光を真っ向から受け止めた。 ◇ メインホールの喧騒を抜け、地下駐車場で待機していたハイヤーの後部座席に滑り込む。 重厚なドアがバタンと閉まり、外界の騒音が分厚いガラスの向こう側へと完全に遮断された。 革張りのシート特有の、少し甘く沈むような匂い。 深く息を吐き出すと、ピンと張り詰めていた肩の筋肉が、じんわりと熱を持ちながら緩んでいくのがわかった。 隣に座る湊もまた、ネクタイの結び目をわずかに緩め、深くシートに背中を預けていた。 街灯のオレンジ色の光が、一定の間隔で車内を横切り、彫りの深い横顔に陰影を落としては消えていく。「……お疲れ様。見事な立ち回りだった」 低い、少しだけ掠れた声が車内の静寂に溶ける。「湊こそ。……あんな風に、自分で全部被るようなこと言うなんて反則よ。本当に、心臓が止まるかと思ったんだから」「事実を述べたまでだ。僕が強引に巻き込んだ。……あの契約を持ちかけたのは、間違いなく僕なのだから」 湊の大きな手が、シートの上でそっとこちらの手に重なる。 指を絡ませると、少しだけ体温が上がったような気がした。 流れる窓の外の景色を見る。 見慣れた高層ビル群のネオンが、冬の澄んだ空気の中でチカチカと瞬いている。 車は本邸がある方向とは違う、都心の中心部へと滑るように走っていた。「……本邸には、もう戻らなくていいの?」
Last Updated : 2026-06-11 Read more