「こちらでございます」 使用人に案内され、廊下を進んだ先にある部屋に音羽と伏見2人はやってきた。 音羽はその部屋を見て、なるほど、と小さく頷いた。 音羽の記憶通りで変わっていなければ、ここは応接室だ。 来客を通す場所。 音羽と伏見を一応は客として扱っている、と言う事だ。 音羽は伏見をちらりと見上げ「応接室ですね」と告げる。 「……へえ、そうか」 伏見は音羽の言葉に、同じような事を思ったのだろう。 面白そうに口角を上げると、愉しむように顎に手をやった。 そして、何の躊躇いもなく扉をノックする。 「伏見です。息子、恭の事について話に来ました」 「──入ってくれ」 「ええ、失礼します」 扉の向こうから樹の声が聞こえる。 入室の許可を得た伏見は、丁寧な言葉で答え躊躇いなく扉を開ける。 伏見が扉を開いてくれているので、音羽が先に入室する。 すると、10畳程の広さがある応接室には、樹と裕衣2人だけが居た。 樹はソファーに座っており、裕衣はソファーの後ろに立っている。 入って来た音羽と伏見、2人を一瞥した樹は小馬鹿にするように鼻で笑い、口を開く。 「音羽1人じゃなく、無関係な男まで着いて来たか」 樹の失礼な物言いに、音羽がむっとして言葉を返そうとしたが、それを伏見が片手を上げて止める。 そして樹に向かって笑みを向け、答えた。 「妻である音羽の息子の事だ。俺の立場で無関係だと言うなら、そちらの女性も無関係だろう?」 「──貴様っ、伏見、お前はまだ音羽の正式な夫では無いだろう。裕衣は正式な俺の妻だ。同席する権利はある」 「だが、血の繋がりは無い」
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