All Chapters of 夫と愛人に地獄に突き落とされた私を救ってくれたのは「若」と呼ばれる裏の世界の人でした: Chapter 311 - Chapter 316

316 Chapters

311話

音羽と伏見は、急いで裕衣のもとへ向かう。 敵対組織の男は既にこの場から離れた。 鉢合わせる危険はない。 「音羽、俺は先に向かう……!」 「わ、分かりました……!」 音羽に危険は及ばないだろう、と判断した伏見は走る速度を上げ、裕衣が落ちた場所に向かった。 磯の香りが強く鼻に届く。 そして、ばしゃばしゃと海面を打つ大きな音が聞こえてきた。 「──いた!……泳げないのか!?」 伏見は舌打ちすると、近くに何かないかと見回す。 「れっ、れんっ、や……っ」 「音羽……!」 後からやってきた音羽が、ぜいぜいと息を乱しながら追いつく。 ばしゃばしゃと溺れている裕衣を見て、音羽はさっと顔色を悪くした。 「何か掴まる物が近くにないか確認してくれ……!」 「わ、分かりました……っ」 溺れ、パニックになっている人間を助けようと海に飛び込んでも、パニックになっている人間に引き込まれ二次災害が起きる可能性がある。 それを避けるため、近くに浮く素材の何かがないか、と探すが辺りは暗い。 このままだと、溺れ死ぬ──。 伏見が一か八か、自分が海に飛び込んで裕衣を引き上げるか、と考えた所で音羽が声を上げた。 「れ、蓮夜……!ロープと浮きがありました!これ、使えないですか!?」 「──使える!よく見つけてくれた音羽!」 音羽が見つけたのは、港に設置してある救助用のセットだった。 あまり手入れされておらず、不安は残るが何もないよりは良い。 伏見は音羽からロープと浮きを受け取ると、それをロープでしっかり縛る。 外れてしまわないか何度か確認し、溺れている裕衣に声をかけた。 「──おい、玉櫛 裕衣!これに掴まれ!」 裕衣の体力がなくなってきているのだろう。 海を打つ音が、かなり弱々しくなってきている。 このままでは、海に沈んでしまう。 そうなってはおしまいだ。 夜の海で溺れた人間を探す事など、不可能に近い。 伏見は浮きを海に投げ入れた。 浮きはちょうど溺れている裕衣の目の前にぼちゃん、と落ち、裕衣の視界にそれが入ったのだろう。 裕衣が浮きをしっかり掴むのが見えた。 「よし、掴んだ。それを離すなよ!」 伏見は声を張り上げ、音羽と一緒にロープを引き始めた。 ◇ 「げほっ、げほげほっ!」 全身を海水でびしゃびしゃにし、咳き込む裕衣。 地
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312話

余程恐怖を味わったのだろう。 ぐしゃぐしゃの顔で、裕衣が見上げる。 すると、見上げた先にある音羽と伏見の顔に、裕衣は情けない声を上げた。 「──ひぃっ、ど、どうしてあんた達が……っ」 後ずさる裕衣に対して、伏見は淡々と告げる。 「馬鹿な女だな。反社会的勢力と関わるって事は、こう言う事だ。しかも、ちらっと見えたがお前を連れてきた男……有名なヤクザ者だろう」 「な、なんであんたがそんな事を知って──」 「会社を経営していれば、それくらいの情報は入る」 堂々と嘘を放つ伏見に、音羽は彼の隣で話を聞きつつ呆れたような目を向けた。 いくら会社経営者だとしても、顔を見ただけでどこそこの人間だ、と分かる訳がない。 分かると言う事は、その世界にいるからだ──。 だが、恐怖やらなにやらでパニックに陥っている裕衣にはそこまで頭が働かなかった。 そ、そうなのね……、と伏見の言葉に納得している。 「あいつらは業界内でも有名だ。蛭のようにしつこく、1度ターゲットを決めたら相手が干からびるまで着いて回るぞ」 「──〜っ、そっ、そんな!私にはもうお金なんて無いのよ!どうしたらいいの!」 伏見の言葉を完全に信じ込んでいる。 裕衣は真っ青になって、ガタガタと震える体を抱きしめ、叫んだ。 そんな裕衣に、伏見は近づき、膝を着いた。 そして、優しく諭すように話しかける。 「あいつらから逃げる方法は1つだけだ」 「……逃げる方法が、あるの……?」 伏見の言葉に、縋るように裕衣が顔を向ける。 伏見は口角を上げ、笑った──。 ◇ 裕衣を助けた港から、少し離れた警察署──。 警察署を見下ろす事が出来る場所に、1台の車が停まっていた。 警察署に入って行く、全身ずぶ濡れの濡れ鼠のような裕衣。 その姿を車から降りて見下ろしていた男──伏見 蓮夜は、車内にいる音羽に向かって振り向いた。 コンコン、と窓をノックする。 すると、音羽がこちらを向いた。 音羽の表情は、唖然としている。 「音羽。玉櫛 裕衣が警察署に入ったのを確認した。……死にたくないだろうからな。恐らく俺の言う通り、自首した」 「蓮夜……、本当?本当に、裕衣は自首を……?」 「ああ。間違いなく自首しただろう。あの女が逃げられる場所は、刑務所の中だけ」 そこまで口にした伏見は、続きは心の中で続け
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313話

「どうした?大丈夫か?」 伏見はドアを開け、音羽の頬に自分の手のひらを添えた。 音羽の頬は白く、冷たい。 その事に気付いた伏見が眉を寄せた時、音羽が口を開いた。 「ご、ごめんなさい……何だか、まだ実感が湧かなくて……。裕衣が、本当に警察署に自首を……」 「ああ。間違いない。俺の目でしっかり見た」 「……っ、昔の事件を……」 「ああ。……音羽に被せた罪を、洗いざらい吐くと言った。そうしないと、自分の身が危ないからな」 音羽も、聞いただろう?そう優しく問いかけてやると、音羽はこくりと頷いた。 裕衣を海から引き上げ、助けた後。 伏見の誘導に従い、裕衣は自らの罪を認め、そして自分の身を守ってもらうために警察に自首すると口にしたのだ。 「念の為、ボイスレコーダーで玉櫛 裕衣の証言は録音してあったが……使わないで済みそうだな。明日にはきっとニュースになる」 「──〜っ、やっと……、やっと、私の罪が……無実だったと、証明されるの……?」 「ああ、そうだ。音羽には何の罪もなかった。それが、世間に知らされる」 ぐしゃり、と表情を歪め、涙を流す音羽。 伏見は音羽を車から抱き上げ、強く抱きしめた。 「もう大丈夫だ、音羽。音羽に無実の罪を着させた奴らは、ぶち込まれる。音羽が無実だと言う事が、世間に発表される」 「れ、蓮夜……っ、蓮夜……っ」 ありがとう、ありがとうと何度も繰り返す音羽に、伏見は笑い、首を横に振る。 音羽がお礼を言う必要などない。 「罪を犯した人間が、逃げ続ける事は出来ない。嘘だってその内バレる。遅かれ早かれ、こうなっていたさ」 「でもっ、でも……蓮夜がいなかったら……こんなに早く暴かれなかった……っ、それに恭ちゃんだって……っ、蓮夜がいてくれたからっ、蓮夜が助けてくれたからっ、恭ちゃんも、事件もっ、全部解決出来たんですっ、蓮夜っ、蓮夜……っ」 音羽は何度も何度も伏見にお礼を伝え、何度も伏見の名前を呼ぶ。 伏見はただただ音羽を強く抱きしめ、彼女が落ち着くまでずっとそのまま抱きしめ続けた。 すん、すん、と鼻を啜る音が聞こえる。 感情の昂りが、ようやく落ち着いてきたのだろう。 伏見は自分の腕の中にいる音羽を見下ろし、優しく問いかけた。 「落ち着いたか?」 「──ん、すみませ、」 「ははっ、大丈夫だ。ほら、目を擦るな。赤
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314話

ばっ、と勢いよく伏見から体を離された音羽は、きょとんと目を瞬いた。 涙に濡れ、キラキラと輝いている瞳が伏見を見つめる。 「蓮夜……?」 「……っ、そろそろ、家に帰ろう」 もう日付けはとうに変わっている。 今から帰宅すれば、夜中には家に着ける。 伏見はドアを開け、音羽を助手席に座らせると自分も運転席に回り、乗り込んだ。 バタン、とドアを閉めてシートベルトを締めようとした伏見だったが、ふと助手席に座る音羽がじっと動いていない事に気がついた。 「──音羽?どうした……」 いつもだったらすぐにシートベルトをするはず。 それなのに、音羽はシートベルトを指先で遊びつつ、どこか拗ねたような口調で呟いた。 「……まだ、蓮夜にぎゅっとしていて欲しかったなって……」 「──〜っ」 「それに、キスも……」 したかった。 ぽつり、と呟かれた音羽の可愛らしいお強請り。 その言葉を聞いた瞬間、伏見の頭の中でぷつり、と何かが弾けた。 運転席に座っていた伏見が、自分のシートベルトを離してぐっ、と音羽に体を近付けた。 シートベルトをしてくれるのかな。そう思った音羽だったが、そのまま伏見の体が覆いかぶさり、自分の唇を塞いできた事に、目を見開いた。 「──んっ」 びっくりして目を見開いた音羽だったが、その目はすぐにとろんと甘く細められる。 自分の我儘を聞いてくれたのだろうか──。 嬉しくて嬉しくて、音羽は瞼を閉じて伏見の背中に手を回した。 音羽の手のひらに伝わる伏見の背中の熱が、とても高い事に驚いた。 瞬間──。 ガクン! 「──きゃあっ!?」 座席が突然後ろに倒れ、音羽は驚きの声を上げてしまった。 閉じていた目を開けると、自分の目の前にはどこか切羽詰まったような伏見の顔がある。 伏見の大きな体にまるで閉じ込められているような。そんな感覚に陥る。 「……俺が我慢していたってのに」 「──え、あ……んっ」 伏見は苦しそうに呟くと、再び噛み付くようにキスをする。 最初から激しく、まるで喰らい尽くすような濃厚なキスに、音羽の頭がぼうっとしてくる。 伏見の舌は、音羽の咥内を思うがままに蹂躙する。 激しい口付けに酔いしれていると、伏見の大きな手が音羽のスカートを捲し上げ
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315話

何度、伏見の指と舌で絶頂に導かれただろうか。 睦み合う2人はいつの間にか後部座席に移動しており、室内は甘ったるく濃厚な夜の気配に包まれていた。 限界だ、とばかりに覆い被さっていた伏見が自分の服を勢い良く脱ぎ捨てる。 服は乱雑に座席の下に放り捨てられ、伏見の鍛えられた均整の取れた体躯が音羽の目に飛び込んでくる。 太い首筋に、くっきりと浮かんだ鎖骨。 胸は厚く、呼吸が荒い今は大きく上下に動いている。 引き締まった腰に割れた腹筋。 そして──。 「熱い視線だな、そんな熱の篭った目で見ないでくれ」 「──〜ッ」 くつり、と掠れた低い声が音羽の耳元で囁かれる。 艶やかなその囁き声に、音羽は知らず知らず無意識にごくり、と喉を鳴らした。 壮絶な色気、だ。 伏見の表情、仕草、声──。 そのどれもに抗い難い色っぽさを孕んでいて、音羽は小さく喘いだ。 待ちきれない、といった様子の音羽に伏見は堪らないと唇を舌で潤す。 「ほら、俺の首に腕を回して……そうだ。しっかりしがみついて……」 まるであやすような、優しい声。 だが、下半身では凶悪なソレが音羽のそこに狙いを付け、今か今かと食らいつこうと涎を垂らしている。 「は……っ、ぅあっ、蓮夜……っ」 「……急かすな、はっ、音羽……っ」 はしたない水音を立てながら、待ち望んでいた質量が音羽の中に入ってくる。 耳を塞ぎたくなるほどの水音が下半身から奏でられる。 だが、伏見の首に腕を回している音羽に、自分の耳を塞ぐ事は出来ない。 「──ひっ、あっ、大きっ、苦し……っ」 「……頼むから煽るな」 「──ッ!」 伏見の耳元で、音羽の掠れた喘ぎ声が途切れ途切れに紡がれる。 切羽詰まったような伏見が、唸るように呟いたと思ったら。 ガツン、と音羽の体に強烈な快感が走った。 かひゅっ、と音にならない悲鳴を上げる音羽だったが、伏見はタガが外れたように苛烈な突き上げを繰り返す。 ガクガクと体が震え、あっという間に絶頂に上り詰める音羽だが、音羽が達しても伏見は腰の動きを止めてくれない。 「──ぃやっ、待って……っ、止まっ、蓮夜……っ」 「無理、だ……っ、は……っ、音羽っ、音羽っ」 「──ひっ」 何度も何度も声にならない喘ぎ声を発し、バタバタと暴れる。 だが、音羽の体をがっちりと押さえつけている伏見
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最終話

◇ 玉櫛 樹、玉櫛 裕衣が逮捕された。 伏見に散々抱かれ、気怠さを残したまま起きた音羽に、その言葉が告げられた時。 音羽は一瞬聞き間違いかと思った。 だが、伏見が見せてくれたスマホ画面にはしっかり樹と裕衣が逮捕される瞬間が映されていた。 感極まった音羽が乱れた服装のまま伏見に抱きつき、それがまた伏見の理性を崩して第2ラウンドに突入し、家に帰宅したのが午後になってしまったのはご愛嬌だ。 これで全て終わったのだ、と安心したのも束の間。 音羽は無実の罪を着せられ、服役したのだ。 それらについて警察署や裁判所、それにマスコミからも連絡が来てそれらの対応に暫くは目が回る忙しさだった。 全てが落ち着くのに、約1年ほどの時間を有したのだ。 ◇ ──4年後。 「お帰りなさいやし、組長、姐さん!」 都内、伏見組。 組員がずらりと並び、頭を下げている。 組員達が出迎えた、一台の車。 そのドアを開けたのは陸野だ。 ドアが開き、車から長身の1人の男が降りてくる。 男は組員や陸野には目もくれず、ドアの隣に立ち、もう1人降りて来るのを待っていた。 「──足元気をつけろ、音羽」 低く、落ち着いた声。 普段組員に向けられるような冷たく威圧感のある声ではない。 柔らかく、とろりと甘さを含んだ声。 そんな声を向けられるのは、組長である彼──伏見 蓮夜の最愛の妻と、子供「達」だけだ。 「ありがとう、蓮夜」 伏見の声の後、ほっそりとしたしなやかな白い手が伏見が差し出した手に重なる。 「頭をぶつけるなよ」 「ふふっ、大丈夫よ」 重ねた手をそのままどちらからともなく繋ぎ合わせ、家へと足を進める。 「組長、今日の予定ですが──」 陸野が伏見の斜め後ろに立ち、予定を告げる。 話される内容に軽く頷いた伏見に、陸野は頭を下げてその場から下がった。 2年前──。 正式に伏見が伏見組の跡を継ぎ、組長に就任した。 それと同時に、前組長は妻と一緒に少し離れた伏見組の別荘に引っ込んだのだ。 残りの人生は、最愛の妻と余生を過ごす、と──。 だが、最近はしょっちゅうこちらに帰ってきている。 今日だって、そうだ。 「──帰った」 「ただいま戻りました、お義父さん、お義母さん」 がらり、と障子を開けて音羽と伏見が部屋に姿を現すと、部屋の中にいた伏見の両
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