音羽と伏見は、急いで裕衣のもとへ向かう。 敵対組織の男は既にこの場から離れた。 鉢合わせる危険はない。 「音羽、俺は先に向かう……!」 「わ、分かりました……!」 音羽に危険は及ばないだろう、と判断した伏見は走る速度を上げ、裕衣が落ちた場所に向かった。 磯の香りが強く鼻に届く。 そして、ばしゃばしゃと海面を打つ大きな音が聞こえてきた。 「──いた!……泳げないのか!?」 伏見は舌打ちすると、近くに何かないかと見回す。 「れっ、れんっ、や……っ」 「音羽……!」 後からやってきた音羽が、ぜいぜいと息を乱しながら追いつく。 ばしゃばしゃと溺れている裕衣を見て、音羽はさっと顔色を悪くした。 「何か掴まる物が近くにないか確認してくれ……!」 「わ、分かりました……っ」 溺れ、パニックになっている人間を助けようと海に飛び込んでも、パニックになっている人間に引き込まれ二次災害が起きる可能性がある。 それを避けるため、近くに浮く素材の何かがないか、と探すが辺りは暗い。 このままだと、溺れ死ぬ──。 伏見が一か八か、自分が海に飛び込んで裕衣を引き上げるか、と考えた所で音羽が声を上げた。 「れ、蓮夜……!ロープと浮きがありました!これ、使えないですか!?」 「──使える!よく見つけてくれた音羽!」 音羽が見つけたのは、港に設置してある救助用のセットだった。 あまり手入れされておらず、不安は残るが何もないよりは良い。 伏見は音羽からロープと浮きを受け取ると、それをロープでしっかり縛る。 外れてしまわないか何度か確認し、溺れている裕衣に声をかけた。 「──おい、玉櫛 裕衣!これに掴まれ!」 裕衣の体力がなくなってきているのだろう。 海を打つ音が、かなり弱々しくなってきている。 このままでは、海に沈んでしまう。 そうなってはおしまいだ。 夜の海で溺れた人間を探す事など、不可能に近い。 伏見は浮きを海に投げ入れた。 浮きはちょうど溺れている裕衣の目の前にぼちゃん、と落ち、裕衣の視界にそれが入ったのだろう。 裕衣が浮きをしっかり掴むのが見えた。 「よし、掴んだ。それを離すなよ!」 伏見は声を張り上げ、音羽と一緒にロープを引き始めた。 ◇ 「げほっ、げほげほっ!」 全身を海水でびしゃびしゃにし、咳き込む裕衣。 地
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