どうやら、当時森崎家が花江家を助けたのは、決して無償の善意などではなかった。あの頃の花江グループは、多額の資金を急いで必要としていた。森崎家は支援に応じる代わりに、一つ条件を出した。――花江グループの株式を5%譲渡すること。さらに五年間、花江グループの利益を森崎グループと六対四で分配すること。花江グループが六、森崎グループが四。どう考えても、森崎家だけが大きな得をする条件だった。当時の雅紀は救命室へ運ばれ、生死の境を彷徨っていた。咲夜はまだ二十歳で、大学すら卒業していない。家族を支えられるのは、真奈美しかいなかった。花江グループを守るため、真奈美は最終的に森崎家の条件を呑むしかなかったのだ。ようやく雅紀は一命を取り留めた。だが、その代償のように脳卒中を起こし、半身不随となってしまう。真奈美は、自分が森崎家と交わした条件を夫に知られれば、再び彼を刺激してしまうのではないかと恐れていた。悩み抜いた末、彼女は一部を隠すことを選んだ。本当は5%だった株式譲渡を、1%だと偽ったのだ。――五年さえ耐えればいい。彼女はそう自分に言い聞かせていた。そしてそれこそが、真奈美が何としてでも咲夜を森崎家に嫁がせたかった理由でもある。家族になってしまえば、「他人行儀な損得勘定」では済まなくなるからだ。真奈美は俯いたまま、低い声で言った。彼女自身も、当時の決断が花江家にとって不公平だったことは理解していた。だが、あの時の真奈美には他に方法がなかった。金を借りられそうなところにはすべて頭を下げた。融資も必死に頼み込んだ。それでも、誰ひとりとして金を貸してはくれなかった。咲夜は黙って母の話を聞いていた。森崎家のやり方について、あえて多くは口にしない。だが、弱みに付け込むようなそのやり口には、強い嫌悪感を覚えずにはいられなかった。それでも混乱の渦中で、母が歯を食いしばって下した決断だったことも理解はできる。もし自分が会社へ行くと言い出さなければ、真奈美はきっと、この事実を最後まで隠し通すつもりだったのだろう。咲夜は母を見つめ、静かに口を開いた。「お母さん、こんな大事なこと、本当なら私とお父さんにも話すべきだったよ。どうして五年後、森崎家がまた別の条件を出してこないって言い切れるの?」
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