「お腹減ったぁ……」 そう言って雪花菜が取り出したのはチャック付きの銀色の袋で、カブトムシのイラストと外国語が書いてある。「あの、雪花菜さん、それは……」「あ、食います?」 雪花菜は封を切ると、取りやすいように開けて千夏に向ける。なんとも言えない異臭に顔をしかめながら中を見ると、大量のカブトムシが入っていた。全身に鳥肌が立ち、悪寒が走る。「いやああぁっ!? な、な、なんてもの食べてるんですか!?」「好き嫌いしちゃダメっすよ」 そう言いながら雪花菜はバリボリと音を立てながらカブトムシを食らう。銀髪の巨乳美女がカブトムシを貪るのは、視界の暴力でしかない。 千夏は両手で目を覆い、幸男は口元を押さえて目を逸らした。(悪食《グラトニー》ってそういうこと……) 何故呼び方にグラトニーが入っていたのか謎だったが、今なら理解できる。「だから、一般人の前でそんなもの食べるなって前から言ってるよね?」「香ばしくて美味いのにー」 お茶と菓子受けを持ってきた成也は、生ゴミでも見るような目で雪花菜を見下ろす。「いいからしまって。先生の前だから口で注意するけど、蹴り飛ばしたいの我慢してるの、分かるよね?」「相変わらず短気っすよねー」 雪花菜はカブトムシをしまうと、成也が持ってきた菓子受けから煎餅を取ってバリボリ食べる。カブトムシを食べていた時の咀嚼音を思い出し、千夏は顔をしかめる。(そういえば、グラトニーってユーチューバーがいたような……) 千夏は前にネットニュースで知ったユーチューバーのことを思い出した。ネット配信者に興味はないが、銀髪に銀色のサイバーサングラスをかけている女性の写真が気になって、記事を読んだことがあった。 記事によればグラトニーは胸元が大きく開いた黒のワンピースを着ており、過去の珍味を求めて未来から来たアンドロイドというおかしな設定で活動している。食用虫の他に、コウモリやトカゲなど、常人が食べないゲテモノ料理を食べる動画をアップロードしているという。
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