土曜日の昼近く。私はソファの上で目を覚ました。首が痛い。薄く開いたカーテンの隙間から昼の光が差し込んでいる。テーブルの上には空になったペットボトル。昨日のコンビニ袋。途中で閉じたノートパソコン。提案が終わった安心感と疲労に負けて、そのまま寝落ちしたらしい。私は額を押さえながらゆっくり身体を起こした。「……終わってる」掠れた声が部屋に落ちる。時計を見る。もう十一時を過ぎていた。久しぶりに何も予定のない土曜日だった。冷蔵庫を開ける。ヨーグルト。卵。賞味期限が怪しい野菜。以上。私は静かに扉を閉めた。考えるまでもない。買い出しだ。適当に髪をまとめてパーカーを羽織る。スウェットのまま財布だけ持って部屋を出た。完全に休日仕様だった。誰にも会いたくない日の格好。エレベーターのボタンを押したところで、隣のドアが開く音がした。振り返る。翔太だった。黒のスウェットにキャップ。片手にはコンビニの袋。こちらを見るなり、一瞬だけ動きが止まる。それから少しだけ口元が緩んだ。「……寝起きですか」私は顔をしかめた。「最悪だから見ないで」「もう見ました」即答だった。悔しい。でも少し笑ってしまう。エレベーターが到着する。二人で乗り込む。狭い箱の中に沈黙が落ちる。でも最近は、その沈黙が前ほど重くない。「買い出し?」翔太が聞く。「冷蔵庫が壊滅してて」私はため息をつく。「生き延びるための買い物」翔太の視線が私の財布だけを持った手に落ちた。そのあと、少しだけ呆れたように笑う。「また適当に済ませる気ですね」「失礼」「だいたい分かります」そう言われると反論できない。忙しい時ほど食事が雑になる。昔からそうだった。放っておくとコーヒーとヨーグルトだけで一日終わる。翔太は少しだけ首を傾げた。「ちゃんと食べてください」その言い方に、私は思わず笑う。「昔も言われた気がする」言ってから少しだけ間が空いた。翔太の視線が静かに動く。「覚えてるんですね」「半年一緒にいたんだから」私は肩をすくめた。特別な意味はない。ただの事実。でも、その言葉のあとに落ちた沈黙は少しだけ柔らかかった。エレベーターが一階に着く。扉が開く。「じゃあ」「ちゃんと食べてください」また言う。私は吹き出した。「
Last Updated : 2026-07-03 Read more