処置室に着くと、玲奈は顔なじみということもあって、少し使わせてほしいと頼んだ。医師たちは彼女を見るなり、すんなりと使っていいと言ってくれた。拓海を中へ連れて入ると、玲奈は準備をしながら言った。「そこに横になって。服も脱いで」拓海は彼女の言うとおり、妙に素直に従った。玲奈が手袋をつけて振り返ると、拓海は細い処置台の上に横になっていた。背が高いせいで、脚が少しはみ出している。玲奈は身をかがめ、慎重に傷の処置を始めた。消毒を済ませ、あらためて丁寧に包帯を巻き直す。一通り終えると、玲奈は短く言った。「これでいいわ」そう言って、処置用トレーや器具を片づけに向かった。使い終えたものを分別して廃棄し、手を洗い終えたそのときだった。まだティッシュで水気を拭く前に、背後から拓海の体温がふっと近づいてきた。次の瞬間、腰がきゅっと引き寄せられる。玲奈の体は、やわらかく拓海の腕の中に閉じ込められていた。その一瞬で、玲奈の全身は強張った。また傷を開かせるのが怖くて、下手に動くこともできなかった。拓海の両腕は玲奈の腰を回り込み、そのまま腹の前で指を絡めるように重なった。彼は顔を伏せ、玲奈の肩口に顎を預ける。そして掠れた低い声で、静かに問うた。「玲奈。俺はいつになったら、本当にお前を自分のものにできる?」吐息の熱が、火のように肌をかすめる。その言葉を聞いた途端、玲奈の体はいっそうこわばった。彼に寄りかかられたまま、押し返すこともできない。しばらく黙っていたあと、ようやく玲奈は低い声で答えた。「須賀君……まだ、私は離婚してないの」その一言に、拓海はわずかな光を見たようだった。すぐに問い返した。「じゃあ、離婚さえすれば……俺のものになってくれるのか?」玲奈は、自分がうっかり彼の誘導に乗せられたと気づいた。けれど、もう何も言わなかった。そのときだった。玲奈のスマホが、また鳴り出した。玲奈は相手も確認しないまま、慌てて言った。「電話に出ないと」拓海も、誰からなのかまでは追及しなかった。少し考えた末、ようやく腕をほどいた。解放された瞬間、玲奈はすぐにその腕の中から身を引いた。彼のほうは見ないまま、手にしたスマホを軽く振って言った。「電話してくる」そ
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