Semua Bab 私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した: Bab 331 - Bab 337

337 Bab

331話

髙野辺には今、最優先で行かなければならない場所がある。 そのため、髙野辺は急かされるような足取りで社長室の扉を開けた。 「──きゃあっ」 「──とっ、すまない、大丈夫か?」 髙野辺が扉を開け、廊下に出ようとした瞬間。 ちょうど扉をノックしようとしていた人物と鉢合わせた。 前方につんのめってしまった女性社員を受け止めるようにした髙野辺は、ふとその女性社員に見覚えがあると感じた。 それも、そのはず。 その女性社員は、中途採用した徳居 朱音だったのだ。 徳居は頬を赤らめ、髙野辺に身を寄せる。 「すみません、ひじ──、社長。受け止めて下さってありがとうございます……」 「いや、礼には及ばない。だが、気をつけてくれ」 「は、はいすみません……」 徳居は可愛らしく頬を染め、ちらりと髙野辺を上目で確認する。 「1番自分が可愛く見える角度」で髙野辺を見た徳居だったが、髙野辺の態度は一社員に対するものから変わらず、冷たい。 「用が無いのならいいか?……急いでいるんだ」 ふい、と顔を背けてしまった髙野辺に、徳居は慌てて追いすがるように声を発した。 「あっ、待ってください、社長……!」 「──何か?」 髙野辺の声に、苛立ちが混じる。 急いでいるというのに声をかけるのならば、早急に確認してもらいたい仕事や案件があるのだろうか。 そう思った髙野辺だったが、足を止めた髙野辺に徳居は場違いな声をかけた。 「あの、お昼を一緒にいかがかな、と思い……」 頬を染め、もじもじとしながら徳居に声をかけられる。 わざわざ自分の足を止めてまで言う事はそれか、と髙野辺は苛立つ。 徳居の方を一切見ないまま、髙野辺は歩き出した。 「──結構だ。忙しい」 「──あっ、社長っ」 足を動かし、廊下を歩いて行く髙野辺の背に、呼び止めるような徳居の声が再びかかる。 だが、髙野辺は今度は足を止める事なく真っ直ぐ廊下を進んだ。 廊下を歩いている髙野辺のスマホが、着信音を鳴らす。 胸ポケットからスマホを取り出した髙野辺は、画面に表示されている名前を見て先程までの苛立ちを一瞬で消し、明るい表情になる。 そして、すぐに電話に出た。 「──もみじさん?どうしましたか?」 柔らかく、優しい声音。 先程の人物と同一人物なのだろうか、と思ってしまうほど、髙野辺の声は柔ら
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-18
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332話

「もみじさん」 「髙野辺さん……!だ、大丈夫ですか!?」 駆け寄ってきたもみじは、開口一番そう尋ねてくる。 髙野辺は先程まで感じていた焦りから解放され、こくりと頷いてから答えた。 「ええ、その件で……もみじさんにお願いしたい事がありまして……」 「私にですか?私で力になれる事があるなら、是非!」 拳を握り、真っ直ぐ目を見て「力になります!」と間髪入れず答えてくれるもみじに、髙野辺は柔らかく微笑む。 そして、立ち止まっていた足を再び動かした。 もみじと髙野辺は並んで歩き始める。 「──廊下だと、誰が聞いているか分かりませんので、もみじさんが使用している部屋に行っても?」 「ええ、もちろんです。そこでお話しましょう」 もみじ専用のデザイン室。 移動してきた2人は、向かい合わせに座った。 「もみじさん、蒔田から聞いていると思いますが……うちの会社で発売予定の商品の情報が、他社に漏れていました」 「──ええ、聞きました。今、流出した経緯を確認している、と……」 「ええ、それと同時に……新商品の発売は今回見送る事になるでしょう。それに変わる商品を開発、販売を急がなければなりません」 「見送る──……」 髙野辺の言葉に、もみじの表情が曇る。 営業会議に出席したからこそ、もみじにはそれがどれだけ会社に損失を齎すのかが分かる。 それに、新商品販売に携わった営業社員達の努力が、全て無駄になった事。 取引先の信用を失ってしまった事。 販路の再確認を行わなければならない事──。 沢山の人達の努力が、一瞬で無駄になってしまったのだ。 今回の新商品の発売に携わった営業社員の人達とも、もみじは営業会議で言葉を交わしていた。 皆、自社の製品を愛していて、大切にしていた。 それなのに、今回こんな事になってしまって……、ともみじは胸が痛んだ。 「そう、ですよね……。他社とそっくりな商品を……発売する訳にはいきませんよね……」 「ええ、残念ながら……。今回の商品は発売を中止します。製造に入っている商品は、相応しい場所に寄付します。……それで、もみじさんに頼みたい事なんですが」 「──はい!」 「もみじさん、急ではありますが、今回の商品に変わる新商品類のデザインを、もみじさんに依頼してもいいですか?」 「──えっ、私に、ですか!?」 まさ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-19
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333話

今回発売予定のメイン商品は、文房具だった。 それ以外には、生活用品が数点。 メインは文房具で、中高生や働く女性向けに文房具を発売する予定だった。 中高生向けには、学校や塾で使う事を想定し、可愛いタイプのものと、シンプルなもの。 社会人女性向けとして、職場で使っても問題無い程度の華やかさ、そして仕事にやる気が出るささやかな可愛らしさを。 生活用品は、マグカップや洗い物ようのスポンジ、枕カバーなどの数点。 文具約10点程と、生活用品数点。 それを、出来るだけ早く納品しなくてはならない。 概要を髙野辺から説明してもらったもみじは、暫し考え込んだ。 どれだけの時間があれば、自分が納得出来るデザインを提出出来るか。 それに──。 (……出来るなら、新商品発売を中止になんてしたくない。……工場での製造も関わってくるから、難しいかもしれないけど……) 先程、髙野辺から概要を説明してもらっている間に、工場での製造にかかる時間も大凡は確認出来た。 (……間に合わせるには、2週間……いえ、10日で納品すれば、ボーダーを超えない……新商品発売を取りやめる事にはならない) 営業社員からは悲鳴が上がるだろうが、新商品発売を中止しないで良くなれば。 そうすれば、TKが被る損失も最小で抑えられる。 「──もみじさん?」 黙り込んでしまったもみじに、心配そうに髙野辺が話しかける。 やはり、こんな依頼、急すぎたか──。 (もみじさんは、世界的なデザイナーSeaだ。……そんな素晴らしいデザイナーに、こんな無茶苦茶な依頼、やっぱり不躾だったか……) 例え、もみじと親しくなったとしても。 仕事は仕事として、きちんと向き合わなくてはならない。 髙野辺自身、無茶な依頼を口にしている自覚はある。 もみじ以外に信頼して、任せたいと言うデザイナーはいない。それは本心だ。 だが、図々しいお願いを口にしてしまったかもしれない。 髙野辺は、この依頼はやはり聞かなかった事にしてくれ、ともみじに言おうとした。 だが、髙野辺が口を開くより先に、黙り込んでいたもみじが顔を上げ、口を開く方が早かった。 「──10日、いえ……7日ください」 「──え?」 「7日。7日時間をいただけたら、必ずデザインを納品します。……そうしたら、製造は間に合いますよね?……新商品の発売を、
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334話

◇ 【最終ログイン -------玖渡川 もみじ】 TK株式会社 情報システム部。 その一室で、パソコンのモニター前にいた男は、モニターを見て首を傾げつつ、ある番号を押して電話をかけた。 〈──はい、蒔田です。社外秘フォルダの最終ログイン者が誰が分かったか?〉 「……ええ、玖渡川 もみじさん、でした」 〈……何だと?〉 電話の向こうで、蒔田が訝しがるのが分かった。 情報システム部の課長──榊 葉月(さかき はずき)は、電話向こうの蒔田と同じように訝しげり、首を傾げた。 「ええ、おかしいですよね……?」 〈ああ。……社長に報告する。ログイン時間と、IPアドレスも取得しておいてくれ〉 「ええ、今取得中です。取得出来たらまた連絡します」 〈ああ、頼む。電話が繋がらなかったらメールを入れておいてくれ〉 「承知しました」 ぷつり、と電話が切れる。 榊は、再びモニターに視線を戻して「やっぱりおかしいよなぁ」と呟いた。 ◇ 蒔田は社長室に向かっていた。 規則正しい靴音を響かせ廊下を歩く。 すれ違う社員たちは社長秘書の蒔田に軽く挨拶をし、頭を下げていく。 その挨拶1つ1つに返事を返しながら、蒔田はさり気なく社員たちの様子を観察する。 (みな、いつも通り仕事をしようとしているが……やっぱりうちの商品が他社に発表された事を気にしているな……) 蒔田の様子は、先程とは違い既に落ち着き払っている。 そんな蒔田の様子を見て、社員たちは少し安心したのだろう。 社長秘書である蒔田が慌てていない。 社長の側近──右腕である蒔田が焦っていない、と言う事は会社は大丈夫だ──。 そんな安心感を、周囲に与えていた。 周囲を観察しつつ、蒔田は社長室の前に辿り着くと扉をノックした。 「──社長、蒔田です」 コンコン、とノックして蒔田が声をかける。 いつもだったらすぐに髙野辺の返事があるはず。 だが、今回は一向に返事がない。 蒔田は不思議に思い、首を傾げてもう1度扉をノックした。 「社長……」 だが、やはり声が返ってくる事はない。 「──全く、あの人は……」 行き先にアテはあれど、本当にそこにいるかどうかは分からない。 蒔田はため息混じりに声を漏らすと、スマホを取り出して髙野辺に電話をかけた。 数コールですぐに繋がり、蒔田は髙野辺の
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-20
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335話

◇ 「玖渡川さん、蒔田です」 コンコン、とノックした後、蒔田が声をかける。 すると数秒後、デザイン室の扉が開いた。 扉を開けてくれたのはもみじだろう。 そう思っていた蒔田だったが、目の前に現れた男にぎょっとして目を見開いた。 「しゃ、社長……!?」 蒔田が驚いた声を上げると、すぐさま髙野辺が自分の口元に人差し指を当て「しいー!」と声を潜める。 疑問符を浮かべつつ、蒔田が自分の口元を手のひらで覆うと、髙野辺は扉をそっと閉めて部屋の外に出て来た。 「もみじさんは今、デザインに集中しているから邪魔をしたくない」 髙野辺は柔らかく、愛おしげに細めた目でデザイン室を見つめた後、蒔田に顔を戻す。 その時には既に扉に向けていた柔らかく蕩けるような甘い笑みは消え失せ、いつも通りの涼やかな表情に戻っている。 「──で、何か分かったか?」 髙野辺に問われた蒔田は、声を潜めて「はい」と答える。 「情シスに確認してもらった所、最終ログイン者の指名は玖渡川さんでした。ですが、IPアドレスは営業部……徳居 朱音が使用しているパソコンです」 「……やはりな。もみじさんが情報を流出させたと罪をでっち上げるつもりだったんだろう。……彼女はデザイナーだ。営業社員のみがログインする事ができる社内システムに、ログインできる訳がない」 「ええ、おっしゃる通りです。……徳居 朱音は入社して間も無いですから、その辺りを把握していなかったのでしょうね」 「ああ、そうだな。愚かな事をしでかしてくれたものだ。会社にこれだけの損害を与えたんだ。それに、何の罪もない人を貶めようとした。これは到底看過できない」 「──呼び出しますか?」 蒔田の言葉に、髙野辺は頷いた。 「ああ。終業後、社長室に徳居 朱音を呼び出してくれ」 髙野辺はそう言うと、ああそうだ、と言葉を続ける。 「営業フロアの監視カメラ映像も頼む」 「かしこまりました」 監視カメラ映像──。 それまで用意しろ、と指示された蒔田は心の中で徳居に向けて合掌した。 社長は、徹底的に、完膚なきまでに徳居を断罪するつもりだ──。 証拠を入手し、少しの逃げ道も残さない。 そして、損害賠償まで請求するつもりなのでは。 そう考えた蒔田の考えは当たっていたようで。 「法務チームにも連絡を。顧問弁護士にも連絡を取っておい
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-20
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336話

デザイン室に戻った髙野辺は、部屋に備え付けられている冷蔵庫から飲み物を取り出す。 デザイン案の作成に集中しているもみじの傍らにあるグラスの中身は、ほぼ空になっていた。 髙野辺はなるべく音を立てないようにグラスを回収し、飲み物を注ぐ。 そして、もみじの近くにそれを戻すと時計を確認した。 (終業時間まで……あと少しだな。集中しているもみじさんには悪いが……後で話しておかないと) どうせ帰る場所は一緒だ。 それにもみじは、会社のために集中してデザイン案を考えてくれている。 もみじの集中力は凄まじく、髙野辺が周囲で多少動いていたり、物音を立ててしまってもタブレットに向かうもみじの手が止まる事はない。 ペンを握るもみじの手は、先程からずっと動いている。 何度もデザインしてはそれをボツにし、修正してはボツにし、それを繰り返している。 髙野辺はふと、自分のお腹がくぅ、と鳴った事に気が付いた。 「──っ」 慌てて自分の腹を押さえ、もみじの様子を窺う。 幸いにも、髙野辺の腹の音はもみじの耳には届いていなかったらしく、髙野辺はほっと安堵の息を吐き出した。 (そう言えば、昼過ぎにもみじさんと合流して……それから何も口にしていないな。もみじさんもデザインに集中しているが、昼飯を抜くのは体に良くない) 夕食を家で食べるなら、軽くつまめる軽食を用意した方がいいだろう。 そう考えた髙野辺は、デザイン室に備え付けられている簡易キッチンに向かった。 冷蔵庫の中身を確認し、卵とベーコンが入っているのを見ると、髙野辺は冷蔵庫横に食パンがあるのに気が付いた。 「ベーコンエッグでいいか……」 顎に手を当て、呟く。 食パンを軽く焼いて、その上にベーコンエッグを乗せる。 軽く食べる程度なら丁度いいだろう。 そう考えた髙野辺は、フライパンを取り出してコンロの火を付けた。 「──ん?」 ふ、と鼻腔をくすぐる良い匂いにもみじは小さく声を上げた。 目の前にあるタブレットから顔を上げ、もみじは開いていたパソコンを閉じた。 食欲を唆る良い匂いを嗅いだからか、もみじの腹は空腹を思い出したように「くぅ」と小さく鳴いた。 もみじが顔を上げた先には、簡易キッチンに立つ髙野辺の姿が見える。 慣れた様子でフライパンを振り、何かを作っているようだった。 「た、髙野辺さん……?
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-21
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337話

「──わあ、美味しそう……!」 「良かった。まだ熱いから気をつけて食べてくださいね」 にこり、と笑顔の髙野辺にナイフとフォークを渡されてもみじは頷いた。 程よく焦げ目がついたパンの上には、艶々のベーコン。ベーコンには卵が程よく絡められていて、もみじの分はパンを4等分に切ってくれている。 逆に髙野辺の分はパンを切っておらず、そのままだ。 「ありがとうございます、髙野辺さん!すっごく美味しそうです!」 「どういたしまして。さあ、食べましょうか」 「はいっ!」 もみじは4等分に切ってくれている内の一切れにフォークを刺して、口に運ぶ。 サクサクとした食感のパンに、ジューシーなベーコン。 そしてベーコンに絡む卵の塩梅が何とも言えず、とても美味しい。 もっと気の利いた言葉が言えればいいのだったが、もみじはただただ「美味しい」と連呼してしまう。 一方髙野辺は男らしく、サクサクと食べ進めて行く。 もみじとは違い、1口1口が大きく、あっという間にぺろりと平らげてしまった。 もみじがようやく2切れめの半分を食べた頃、髙野辺は2枚目に口を付けていた。 それもぺろりと平らげてしまっていて、髙野辺はグラスに口を付けている。 やっぱり男の人は食べるのが早いな。 と、もみじが感心していると、ふと髙野辺と目が合った。 「──?」 きょとん、と目を瞬かせるもみじに、髙野辺はふふっ、と破顔する。 そして僅かに体を乗り出すと、もみじの口元に手を伸ばした。 「もみじさん、口元にパンがついてしまっていますよ」 「──えっ!?す、すみません……!」 かぁっ、ともみじは恥ずかしさで顔を赤くする。 サクサクのパン生地が美味しくて、夢中になって食べてしまったからだろう。 子供みたいだ、ともみじが恥ずかしがっていると、髙野辺が指の甲でもみじの口端を拭った。 「喉を詰まらせないでくださいね」 「す、すみません……美味しすぎて、がっついてしまいました……」 「お気に召していただいて光栄です」 ふふ、と悪戯っぽく笑う髙野辺に、もみじも笑い返す。 2人で笑い合い、穏やかな時間を過ごした後。 食器は2人でキッチンに運び、もみじが食器を洗って髙野辺が洗い終わった食器を拭いて、元の棚に戻す。 濡れた手を拭きつつ、髙野辺はもみじに顔を向けて口を開いた。 「──もみ
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