パチン、と薄いゴムが弾ける無機質な音が、影の消し去られた空間に二度、低く反響した。 ヴィクトルは外した手袋をスチール製のトレイへと無造作に落とすと、真っ白なスーツの襟元を長い指先で軽く整え、長机からゆっくりと歩み出てきた。大理石の床を叩く靴音は驚くほど小さく、空気の層を踏みしめているかみたいに均一なリズムを刻んでいる。「わざわざこのような地下の果てまで足を運んでいただけるとは。有栖川の息女の決断力には、敬意を表せざるを得ません」 眼鏡の奥にある薄青い眼球が、値踏みするようにこちらの顔、首筋、そしてウールコートのポケットへと滑る。「挨拶はそれくらいでいいよ、白スーツの男」 白亜が一歩、前に出た。長い銀髪が面発光の照明を反射して白く輝き、その細い指先は、いつでも動けるようにコートのポケットの縁に引っ掛けられている。「あんたのその慇懃無礼な喋り方、聞いてるだけで頭の奥がツンとしてくる。用があるのはお姉さんでしょ。早く目的のものを出しなよ」「おや、白竜の娘さんは随分と気が短いようだ。せっかく上質な紅茶を用意させようと思っていたのですが」 ヴィクトルは可笑しそうに細い眉を上げ、完璧な左右対称の微笑みを崩さないまま、部屋の壁面へと手を向けた。「では、歓迎の代わりに、我が研究室が誇るコレクションをご案内しましょう。瀬理亜さん、あなたの魂が持つ可能性を理解するためにも、これらは非常に有益なサンプルです」 促されるままに、白亜の半歩後ろについて歩みを預けた。 一歩動くたびに、床の眩しい白さが視界の端をチカチカと刺激する。 部屋を囲むように配置された強化ガラスの壁面。その一部が、ヴィクトルがリモコンのボタンを押すと同時に、スッと音もなく横へスライドした。 現れたのは、天井まで届く巨大なディスプレイケースだった。 棚には、無数のガラス製の円筒や、細い管が幾重にも絡み合った複雑な容器が、整然と並べられている。それぞれの容器の内部には、淡い青色、あるいは白濁した液体が満たされ、下部からの青白い照明に照らされて不気味な光を放っていた。「……何、これ。薬の匂いに混じって、すごく古い土
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