「黎、様……っ、だめ……離れて……っ!」 床に額を擦り付けるようにして、必死に声を絞り出す。 しかし、喉がカラカラに乾ききっており、まともな音になって届かない。 黎は血走った黄金の瞳を限界まで見開き、這いつくばる姿をその網膜に捉えていた。彼の首筋から頬にかけて、黒く、金属のような鈍い光沢を放つ硬質な鱗が、皮膚を突き破るようにしてびっしりと浮かび上がってくる。「せ……り、あ……ッ」 地底の奥深くから響くような、重低音の咆哮。 黎は伸ばそうとした右手の指先を、鋭く湾曲した漆黒の鉤爪へと変態させ、空中に向けた。掴み取ろうとするように、引き寄せようとするように、細かく震えるその手。 だが、彼が一歩前に進むたびに、四方から押し寄せる見えない圧力が、その巨大な筋肉の起伏を力任せに押し潰していく。黎の硬い革靴の先から、大理石の床に向かって、ミシリ、ミシリと細かい霜が広がり、直後、その霜が黒い煤へと変色してパラパラと灰になって消えていった。 黎の持つ強大な生命力の熱そのものが、この部屋の特殊な空調システムによって、強制的に外側から奪い取られ、装置の中へと吸い込まれているのだ。 ◇「ノワールをそこまでコケにして、私が黙って見てると思ってたら、大間違いだよ!」 激しい風切り音とともに、銀色の長い髪が光の矢となって空間を裂いた。 白亜が床を強く蹴り、ヴィクトルの立つ障壁の向こう側へと、弾丸のような速度で飛びかかっていく。彼女の両腕はすでに完全に白い鱗に覆われ、黒曜石のように鋭い鉤爪が、ヴィクトルの顔面を狙って容赦なく振り下ろされた。 ギィィィィンッ!!! 耳の奥を直接針で刺すような、金属同士が激しく摩擦する甲高い高音が室内に爆発する。 ヴィクトルが展開した青白い障壁の表面に、白亜の爪が深く食い込み、そこから激しい青い火花が幾重にも弾け飛んだ。「ほう、さすがは白竜の血筋。この減圧状態の中でも、それだけの質量を維持できるとは。非常に興味深い耐久性だ」
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