「瀬戸さん!」実花は慌てて航へ駆け寄った。「……喉、カラカラだよ」弱々しく訴える航の向こうでは、まだ電話が鳴り続けている。「代わりますね。やることは東国さんから説明を受けています」そう言うが早いか、実花は鳴った電話を取った。「お電話ありがとうございます」『いつ復旧するんですか!』怒った声だった。「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」実花は相手の言葉を遮らず、最後まで聞いた。三人目の電話を受けたところで、実花は状況を理解した。怒り。焦り。不安。それらの感情が束になって、受話器の向こうから叩きつけられるような電話ばかりだ。「はい。承知しております」光也には技術があると言われたが、実花にその自覚はない。しかし、光也はそれ以上何も言わなかった。つまり、実花の思うように話をして大丈夫ということだ。相手からぶつけられる感情を落ち着かせる。その感情を少しでも和らげ、担当者へ繋ぐ。それが自分の役目だと実花は理解していた。焦りからか、相手は専門的な言葉を使う。それには取り合わない。専門的なことは、それを担当する社員がいると聞いている。.『仕事にならないんですよ!』「承知しております」相手が早口であればあるほど、ゆっくりと返す。安心してほしい。その気持ちを込めて、理解や共感を口にする。「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」『いや……御社が原因ではないと分かっているのですが、気が逸ってしまって……』「いいえ。直接の原因がこちらになくても、御社の仕事をサポートするのが私たちの仕事です」『そう言っていただけると……』声の勢いが弱くなり、感情が緩む。「担当者へお繋ぎいたします。お手数ですが、詳しい状況を改めて説明していただけますか?」そう言って社員へ繋ぐ。一本。また一本。焦る人。怒る人。泣きそうな人。そのたびに実花は相手の言葉を最後まで聞き、不安を受け止め、専門部署へ繋いでいった。.「電話が……落ち着いてきた……」「三回も四回も電話してくるところがあったからな」「……助かった」周囲から漏れる安堵の声に、実花も少しだけ肩の力を抜いた。気づけば一時間以上が過ぎていた。喉が少し痛い。そう思った瞬間だった。机の横へ紙コップが置かれる。「飲め」光也だった。「ありがとうございます」温かい飲み
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