あまりに率直で、あまりに愚かな告白だった。「平気なわけ、ないでしょう」 少しだけ、笑ってしまう。怒りではない。呆れと、どこか泣きたいような気持ちが混ざった笑いだった。「そうだな」 ヴィルレオも否定しない。「だが、お前はいつも笑っていた」「笑うしかありませんもの」「なぜだ」「公爵夫人だからです」 即答だった。「あなたの隣で、しかめ面や泣き顔ばかり見せて、何になりますの」「夫婦だ」 その一言は、思ったよりずっと強く響いた。 リュゼリアは息を止める。 夫婦だ。 あの言葉を、彼はどんな思いで口にしたのだろう。義務としてか、立場としてか、それとも。「……夫婦、ですか」 問い返した声は、自分でも驚くほど静かだった。「そうだ」「でしたら、」 リュゼリアは膝の上で指を組み、窓の外を見た。夕暮れの街並みが流れていく。人々の暮らしの灯りが、一つまた一つと通り沿いに灯り始めていた。「少しだけでも、そう思える時間がほしかったです」 ヴィルレオは何も言わない。「外の方々がいないところで。誰の視線もない食卓で。夜の寝室で。そういう場所でも、わたくしがあなたの妻であると思える時間が」 言ってしまえば、ひどく幼い願いだ。だが、それこそがずっと欲しかったものだった。豪奢な贈り物でも、派手な愛の言葉でもない。ただ、二人きりのときにも、自分がこの人の隣にいてよいのだと感じられる瞬間が。 ヴィルレオの手が、膝の上でゆっくり握られるのが見えた。「……俺は、うまくできなかった」 低く絞るような声だった。「それは知っています」「知っていて、ずっと何も言わなかったのか」「言っても困らせるだけだと思っていました」「困らせればよかった」 あまりにも即座で、リュゼリアは思わず彼を見る。 彼もまた、こちらを見ていた。青灰色の瞳の奥に、いつもの冷たさとは違う、焦れたような熱がある。「お前は、俺が気づかないまま耐えれば済むと思ったのかもしれないが」 ヴィルレオは低く続ける。「気づいた時には、もっと困る」 その言葉に、胸の奥で何かが静かに震えた。 気づいた時には、もっと困る。 それはつまり、彼にとっても、もう見過ごせないところまで来ているということなのだろうか。 けれど、そこへ希望を見てはいけないと、理性が強く告げる。遅い。遅すぎる。そういう物
Last Updated : 2026-06-24 Read more