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第2話

작가: クレヨンまるこ
「晴南さん、一人だと……少し怖いの」

背後から、震える洸の声が追いかけてきた。

晴南はすぐさま手を伸ばし、洸の手をしっかりと握り締めると、宥めるように優しく声をかけた。

「どうした?慣れない環境で落ち着かないのか?」

洸はただ、消え入りそうな様子で小さく頷いた。

その痛々しい姿に、晴南の胸は締め付けられた。「俺がそばにいる。何も怖いことはないよ」

「……ごめんなさい。私、あなたと咲夜さんの邪魔をしてしまったかしら」

洸の視線が咲夜へと向けられる。それはまるで、今この瞬間に初めて彼女の存在を認識したかのような、白々しいまでの素振りだった。

洸は緊張に声を震わせながら言葉を継いだ。「分かっているの、咲夜さんが本当は私を歓迎していないことくらい。晴南さん、全部私が悪いの。私のせいで咲夜さんと喧嘩なんてしないで……やっぱり私、帰るわ」

晴南は無意識に咲夜の方を振り返った。「そんなことはない。咲夜はそれほど心の狭い女では……」

晴南が言い終わるより早く、咲夜は勢いよく立ち上がると、口元に冷ややかな嘲笑を浮かべた。

「お出口はあちらよ。見送りなんて必要ないわよね」

自分は一言も発していないというのに、洸はしつこいほどに話題をこちらへと振ってくる。

仏の顔も三度までと言うが、そもそも咲夜はそれほど辛抱強い性格ではない。

洸は一瞬、呆然と立ち尽くした。いつもなら耐え忍んでいるはずの咲夜が、これほどストレートに拒絶し、追い出すような真似をすることなど予想だにしていなかったのだろう。

洸は赤く腫れた瞼をしばたたかせると、潤んだ瞳で隣の晴南を見つめた。

咲夜に「いじめられ」て泣き出した洸の姿を見て、晴南は即座に表情を曇らせた。

「咲夜、いい加減にしろ。洸をここに連れてきたのは俺だ。お前に彼女を追い出す権利などない。

洸は今、うつ病の症状に苦しんでいるんだぞ。それなのに、そこまで高圧的に彼女を追い詰める必要があるのか?……お前はいつから、そんな冷酷な女になってしまったんだ」

吐き捨てるようにそう言い放つと、咲夜の返事も待たずに、晴南は洸の頬を伝う涙を指先で拭った。

「洸、大丈夫だ。俺がいる限り、咲夜に意地悪なんてさせないから」

洸はそっと晴南の胸に飛び込んだ。

「私を心配してくれているのは分かっているわ、晴南さん。でも、咲夜さんはあなたの婚約者なのよ。私が悪いの。あなたに甘えすぎてしまった。

こんなのいけないって分かっている。でも、今の私にはあなたしかいないの。他に誰を頼ればいいか分からない……お願い、私のために咲夜さんと喧嘩しないで」

洸は縋り付くようにそう言いながら、視界の端で咲夜を挑発的に射抜き、声を出さずに唇の動きだけでこう告げた。

――あなたの負けよ。認めなさい、私には勝てないって。

咲夜は、自分の心はもう凪いでいると思っていた。

しかし、晴南が躊躇なく洸を庇う姿を目の当たりにし、心臓が再び激しく疼いた。

洸の稚拙な挑発など、相手にする気すら起きない。

ただ冷ややかな視線で二人を据え、咲夜ははっきりと拒絶の言葉を突きつけた。

「出て行って」

晴南は、咲夜の波一つない穏やかな瞳と視線がぶつかり、なぜか急激な胸騒ぎを覚えた。

彼は、咲夜がどれほど自分を深く愛しているかを熟知していた。そうでなければ、幾度となく約束を反故にしてきた自分を、これほど長く許し続けられるはずがないからだ。

以前なら、咲夜がへそを曲げたとしても、根気強く二、三言なだめれば済む話だった。

だが、目の前の咲夜はどこか「変わってしまった」ように感じられてならない。

晴南が何かを言いかけようとしたその時、彼にしがみついていた洸が身を離した。

洸はおどおどとした様子で咲夜の前まで歩み寄り、縋るように手を差し出した。

「咲夜さん、まだ怒っているの?私が悪かったわ。謝るから、晴南さんに当たらないであげて」

洸の手が触れようとした瞬間、咲夜は反射的な嫌悪から、激しくその手を振り払った。

触れられたくない。吐き気がするほど不快だった。

咲夜が強く手を払った勢いに押され、洸は悲鳴を上げながら後ろへと倒れ込む。

洸は晴南の足元に、無様に尻餅をついた。

「洸!」

晴南は屈み込み、洸を横抱きにして抱き上げた。

それとほぼ同時に、洸は悔しげにすすり泣いた。「晴南さん、咲夜さんは悪くないの……私が怒らせるようなことをしたのがいけないんだわ。彼女が鬱憤を晴らすのも当然よ、責めないであげて……」

洸はわずか数言で、転倒の責任を咲夜に押し付けた。

実際には、咲夜は彼女に触れてすらいなかったというのに。

その言葉は、まるで咲夜に突き飛ばされたのだと、雄弁に晴南へ訴えかけていた。

案の定、その言葉を聞いた晴南は怒りに震え、咲夜を激しく睨みつけた。「咲夜、いい加減にしろ!今すぐ洸に謝れ」

彼は洸の言葉を鵜呑みにし、咲夜が先に手を出したと断定して、強引に謝罪を命じた。

是非もわきまえぬ晴南の偏愛ぶりに、咲夜はただ可笑しさがこみ上げてきた。

「私が彼女を押したわけじゃないわ。どうして謝らなきゃいけないの?晴南、その目がただの飾り物なら、必要としている誰かに寄付したらどう?」

自分がやっていないことを認めるつもりは、毛頭なかった。

その頑なな態度に、晴南は完全に激昂した。「咲夜……お前という奴は、なんて話の通じない女なんだ!」

「ふん」

咲夜は鼻で笑うだけで、この問題を晴南と言い争い続ける気などさらさらなかった。

洸が晴南の袖を弱々しく引っ張り、消え入りそうな声で言った。「晴南さん、足を挫いたみたい……痛いわ」

言い終わるか否かのうちに、洸はまた涙をこぼした。

その涙に、晴南の心は張り裂けんばかりに揺さぶられた。

晴南は咲夜を鋭く睨みつけた。「洸に何も起きていないことを祈るんだな」

そう言い捨てると、彼は洸を抱きかかえたまま、背を向けて去っていった。

晴南の焦燥しきった背中を見送る咲夜の目には、その光景がひどく眩しく、そして無残なほど皮肉に映った。

彼がどれほど洸を大切に思っているか知っていたつもりだったが、こうして目の当たりにするのは、やはり毒が回るように痛かった。

今となっては、自分の心にどんな感情が渦巻いているのか、もはや説明をつけることすら叶わなかった。

鈍い痛み。

それが過ぎ去った後には、ただ麻痺した空虚な感覚だけが残った。

咲夜はゆっくりと我に返り、ベッドに横たわったが、眠気などとうに霧散していた。

目を閉じれば、晴南の憤怒に満ちた表情が脳裏に焼き付いて離れない。

結局、咲夜は一晩中、浅い眠りと不安の狭間を彷徨うことになった。

朝、目を覚ますと、頭が重く沈むようで酷く気分が悪かった。

階段を下りる間も、こめかみがずきずきと脈打つように痛む。

咲夜は習慣に従うように台所へと足を向けた。

いつもならこの時間は、もうキッチンに立ち、晴南のためにかぼちゃのポタージュを煮込んでいる頃だ。

晴南は幼い頃から胃腸が弱く、一緒に暮らし始めてからというもの、咲夜は三食欠かさず細やかに気を配ってきた。

ポタージュが好きでもない彼女が、晴南の体調に合わせて何年も食べ続けてきたのだ。

無意識に冷蔵庫を開け、食材を取り出そうとした瞬間、その手がぴたりと止まった。

――習慣とは、なんと恐ろしいものだろうか。

咲夜は食材を元の場所へ戻すと、自分のためだけの簡単な朝食を作ることにした。

ほどなくしてブラックコーヒーを淹れ、出来上がったサンドイッチを手に食卓へと向かった。

椅子に腰を下ろそうとしたその時、華やかな人影が目の前に現れた。

洸は胸元の大きく開いたワンピースを身に纏い、弾んだ声で言い放った。「咲夜さん、いいご身分ね。昨夜は悲しくて眠れないんじゃないかと思ってたわ」

その言葉とともに、咲夜の視線は自然と洸の鎖骨の辺りへと落ちた。

剥き出しになった白い肌に刻まれた、鮮明で生々しいいくつかの痕跡が、咲夜の視界に飛び込んできた。

視線に気づいた洸は、得意げに顎を上げ、艶然と微笑んだ。

「晴南ったら、本当に困った人。昨夜、もっと優しくして、痕は残さないでってあんなに言ったのに……全然聞いてくれなかったのよ。

咲夜さん、晴南が言っていたわ。あなたは退屈で、抱く気にもなれないって。どうしてそんなに惨めなの?私だったら、恥ずかしくて壁に頭をぶつけて死にたくなるわ」

洸は勝ち誇ったように、その「証拠」を見せびらかした。

しかし、咲夜は終始、凪いだ海のように平然としていた。

咲夜を激昂させようと目論んでいた洸は、ひどく拍子抜けした様子だった。暖簾に腕押しといった手応えのなさに、洸は悔しげに歯噛みする。

洸は忌々しげに咲夜を睨みつけたが、その時、視界の端に階段を下りてくる晴南の姿を捉えた。

次の瞬間、洸は表情を一変させ、足早に咲夜の目前へと詰め寄った。

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