そのやり取りを後ろで聞いていた直哉は、呆気に取られていた。聖奈さん、こんなに手強かったのか……今日ここに真帆さんまでいたら、きっともっと容赦なくやり込めていただろうな……咳払いが聞こえ、直哉は我に返った。一雄は表情を整えたものの、目元に笑みを残したまま言った。「聖奈は甘やかされて育った子なんだ。気にしないで」そう言うと、今度はわざと厳しい顔を作って聖奈を見た。「聖奈。もう子どもじゃないんだから、そんな好き勝手なことばかり言ってるとダメだぞ」「聖奈」という呼び方には、叱責よりも愛情のほうがはるかに強く滲んでいた。風香も何か言い返したかったが、結局は苦笑いを浮かべるしかなかった。聖奈も一応は素直に謝ってみせた。ここでさらに責め立てれば、年下の女の子をいじめる大人に見えてしまう。風香は深く息を吸い、無理やり笑顔を作った。「大したことではありません。一雄さん、聖奈ちゃんを叱らないでください」そう言って話題を変えた。「そういえば、先ほどあちらで取引先の方が、一雄さんとお仕事のお話をしたいとおっしゃっていましたけれど……」一雄は風香を一瞥したものの、すぐには返事をせず、代わりに聖奈へ視線を向けた。「一人で大丈夫か?」「もちろん!」聖奈はにっこり笑った。「お兄ちゃん、私もう子どもじゃないんだから。行ってきて」本当はもう少し注意しておきたかった一雄だが、この場で目立つまいとして。「無理はするなよ」とだけ言った。だが、少し心配に思った直哉は足早に一雄へ追いついて言った。「一雄さん、本当に聖奈さんを風香さんと二人きりにして大丈夫なんですか?さっきだって、あんなに……」「何だ?」一雄は低い声で遮った。「聖奈は何だかんだ言っても、西園寺家の正当なお嬢様だ。風香も、聖奈には手を出せない」「それはそうですが……」直哉は振り返って二人を見た。「でも、聖奈さんは風香さんみたいな駆け引きには慣れていません。本当に放っておいていいんですか?」その言葉に、一雄はかえって笑みを浮かべた。「俺が近くで見張っていたら、聖奈も思うように動けないだろう」一雄は聖奈のことをよく知っている。あの自由奔放で頭の切れる妹が、そう簡単に負けるはずがない。それに、風香が自分をその場から遠ざけたかった理由も分かっている。ならば、その思惑に乗って
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