◇「……素晴らしい。実に見事なキャスティングの、喜劇の結末(フィナーレ)だ」 パチン、パチンと、乾いた拍手の音が、ホールの静寂を切り裂いて響き渡った。 人混みの奥から、ゆっくりと歩み出てきた一つの影。 仕立ての完璧な真っ白いスーツ。 綺麗に撫でつけられた金糸のような髪。 縁なしの眼鏡の奥で、温度を一切感じさせない薄青い瞳が、こちらを真っ直ぐに捉えていた。 ヴィクトル・フォン・フランケンシュタイン。 彼の唇には、あの影を消し去られた実験室での同じ、彫刻のように崩れることのない、完璧な微笑みが張り付いていた。「有栖川瀬理亜さん。あなたのその人間らしい情緒の爆発、実に美しい。……ですが、その揺れこそが、私の仕掛けを最も強く目覚めさせるための、最高の呼び水なのですよ」 ヴィクトルは眼鏡のブリッジを長い指先でそっと直すと、長机の端にある、見たこともない小さな黒いスイッチを、滑らかに押し込んだ。 ピッ、ピッ、ピッ――。 突如として、豪華客船「レヴィアサン」のメインホール全体の照明が、不気味な静電気を帯びたように一斉に青白く明滅し始めた。 ウィィィィンという、鼓膜を直接針で刺すような凄まじい高音の駆動音が、大理石の床を伝って足の裏へと這い上がってくる。「な……、何だ、この音は!?」 有栖川宗隆が、折れたステッキの残骸を握りしめたまま、狼狽した声を上げた。 ホールの巨大なパノラマウィンドウの向こう、東京湾の夜の海が、船体の底から響く異常な振動に合わせて、激しく水しぶきを上げて波立ち始める。 空気の密度が、急激に、物理的な重さを持って変化していくのがわかった。 足元の大理石の床の裏側で、隠されていた仕掛けが一斉に目覚めた。目に見えない冷たい波が、床下から這い上がるようにして、こちらの足首へまとわりついてくる。「さあ、夜会の第二幕を始めましょう。瀬理亜さん、あなたのその魂の芯に根ざした力を、この船の底にある『もう一つの器』へと、移させてもらいましょうか」 ヴ
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