全員が一斉に入口を見る。そこでは、瑛心が息を切らしながら立っていた。顔には驚きと、戸惑いと、隠しきれない喜びが混ざっている。『どうしたの?』あやめが穏やかに問いかける。瑛心は沈淵へ向かうのではなく、真っ先にあやめのもとへ駆け寄った。そして耳元へ唇を寄せる。ほんの数秒。小さな声で何かを伝えた。次の瞬間、あやめの目が大きく開いた。表情が明るくなる。『本当に?』瑛心は潤んだ目で頷いた。『はい。まだきちんと確認したわけではありませんが』声が震えている。あやめは瑛心の両手を取った。『おめでとう』『ありがとうございます』瑛心が泣きそうな顔で笑う。あやめは、その肩を優しく叩いた。そして、瑛心を沈淵のほうへ優しく押す。『ほら。聞かなかったことにするから、最初に伝える相手は他にいるでしょう?』瑛心は緊張したように沈淵を見る。沈淵は何が起きているのか分からず、首を傾げていた。『どうした?』瑛心はすぐには答えない。沈淵はあやめの「おめでとう」という言葉から、自分なりに理由を探し始めた。『資格試験に受かったのか?』瑛心が目を瞬かせる。『頑張っていたものな』沈淵の表情がすぐに明るくなる。『どの資格だ?』最近の瑛心は色々な資格を取っていた。邪魔者扱いされているのは勉強が大変だからだと沈淵は自分を慰めてもいた。『今日は祝いだな。夜は店を取ろう。食べたいものを考えておいてくれ』『ううん、そうじゃないの』瑛心が慌てて止める。『そうではなくて……』沈淵の笑顔が曇る。『……不合格だったのか』『えっと……』『気にするな』沈淵は慰めるように瑛心の肩へ手を置いた。『次がある。今夜は残念会と反省会だ。好きなものを食べに行こう』合格でも、不合格でも、結論は食事だった。瑛心は張り詰めていた緊張がとけていくのを感じた。そして、小さく笑った。『何がおかしい』『沈淵らしいと思って』笑う瑛心を見て、沈淵も少し安心したように表情を緩める。『それで、何が食べたい?』瑛心は少し考えてから答えた。『匂いが強くなくて、胃に優しい料理がいいです』『胃が悪いのか?』沈淵の顔色が変わる。『いつからだ? 医者には診せたのか、いや、いま痛むのか?』『沈淵……』『吐き気は?』一気に質問が増えた。『落ち着いて』瑛心は優しく笑う。
최신 업데이트 : 2026-04-24 더 보기